パッセンジャー

パッセンジャーのレビュー・評価・感想

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パッセンジャー
7

圧巻の映像!余韻の残るSF映画

この映画は、宇宙移住を目指し、人工冬眠ポッドで眠る乗客5000人を乗せた宇宙船を舞台としたSF映画です。たった1人だけ、他の乗客より90年も早く目覚めてしまったジムと、孤独ゆえにジムが目覚めさせてしまったオーロラが主人公で、ポッドの故障により目覚めたと思っているオーロラは、ジムが故意に自らを起こしたことを知りません。

まず、とにかく映像が素晴らしい映画です。アカデミー賞美術賞にノミネートされただけあり、宇宙空間に浮かぶアヴァロン号が壮大で、船内のデザインも洗練されています。

特にオーロラがプールで泳いでいる際に、重力制御装置の故障で船内が無重力となり、プールの水が巨大な球体となるシーンは圧巻です。無重力で人や物が浮く場面はSF映画ではお決まりのシーンですが、これほどに大量の水が浮くシーンは他に類がなく、迫力のある映像となっています。

さらに、孤独だったとは言え、無事に惑星移住が叶うはずだったオーロラを故意に起こしたジムと、それを知らないオーロラのラブストーリーは、観終わったあとに「自分ならどう行動しただろうか」と考えさせる内容になっており、強いテーマ性を感じさせます。

派手な映像やアクションが中心となり、ストーリーがないがしろになっているSF映画も多い中、「パッセンジャー」は、映像とストーリーの両軸で楽しませてくれる映画となっています。

パッセンジャー
8

宇宙を移動する恐ろしさ

地球から別の惑星に移動する5000人を乗せた巨大宇宙船にアクシデントが起こる。冬眠装置で120年の眠りにつくはずが、宇宙船が小惑星体につかまりシステム異常が起こる。
その異常により、わずか30年で冬眠からただ一人目覚めさせられてしまったエンジニアである主人公ジム。現状を打破しようと奔走するが、その宇宙船には異常事態に対応出来るバックアッププランを備えていなかった。やがてアンドロイドバーテンダーのアーサーが話相手になる。
絶望に打ちひしがれるジムを唯一元気付けたのが冬眠中の女性作家オーロラ。彼は、彼女に一目ぼれしてしまう。1年間悩んだ結果、彼は彼女を事故に見せかけて冬眠装置から目覚めさせてしまう。このことは、アーサーとの秘密であった。やがて二人は結ばれる。ある日アーサーの一言から事実がバレてしまう。取り乱すオーロラにジムは何も出来ず疎遠になってしまう。
月日が流れ、またもや宇宙船の異常により甲板長のガスが目覚めてしまう。彼のおかげで宇宙船へのアクセスが可能となり、事態は好転すると思われた。しかし、宇宙船はさらに大きな機能不全を起こし停止破壊寸前となってしまう。3人で宇宙船の異常原因を突き止めようとした矢先、ガスは冬眠装置の異常が原因で臓器壊死を起してしまう。そして、ジムとオーロラに原因を突き止めるようアクセス権を託して息絶えた。ガスの手助けがあったおかげで、2年前の小惑星体衝突が原因で核融合炉が機能停止寸前であることが分かる。修復には核融合炉から熱を排出する必要があるが、排出口を手動で開けなければならず、ジムが自分を犠牲にして作業を行った。彼は心停止したが医療ポッドのおかげで息を吹き返す。宇宙船も正常に戻り、予備の冬眠装置もあることが分かる。しかし冬眠装置は1台しかなく、ジムはオーロラに贖罪の意味を込めて、装置を使うように伝える。
88年の月日が流れ、宇宙船の旅路も終わりに近づく場面に変わる。目覚めた乗組員達がフロアで見たものは、一帯を覆う緑の木々と、その中心にジムが植えた木であった。作家であるオーロラのアナウンスと共に88年前の真実が語られることになる。オーロラはジムと人生を共にしたのである。

パッセンジャー
10

時間を忘れて見入ってしまった傑作SF映画

予告編を観ただけでもワクワクした映画。「120年をかけての人類移住プロジェクト。乗客5000人。ひとりの男が目覚めてしまった。…90年も早く。」…この事実の意味するところは何か。つまり暗黒の宇宙を旅する巨大宇宙船の中で、他の誰(人間)とも話すこともなく、生涯たったひとりで老い、死んでいかなくてはいけないということ。…想像しただけで、計り知れない虚無感が襲う設定だ。…そこで彼はついにそれに耐えられず、ひとりの好みの女性の安眠装置を壊し、彼女を目覚めさせてしまう。自分の孤独を埋めるために。彼女の運命を犠牲にしたのだ。当然彼女はその真実を知らないから、いつしか彼らは恋に落ちる。例え、不幸な運命であっても、愛する人が常に傍にいるのであれば、この環境においても、きっと楽しく人生を終えられるかもしれない。しかし現実はむごい。ふとしたキッカケで彼女は真実を知ってしまう。彼女を目覚めさせたのは彼であることを。もうこうなると最悪だ。自分を弄んだ犯罪者と一緒に生涯を終えなくてはいけないのだ。まさに天国から地獄。…果たしてこれからの彼らに待ち受ける運命は?。

単に映画設定だけでなく、俳優さんがほぼこの二人だけで、これだけ面白い映画が作れることに驚嘆すると共に、モルテン・ティルドゥム監督に心から拍手を贈りたい。SF映画は沢山観てきたが、その中でも5本の指に入る傑作だと思う。