沈黙 -サイレンス-

沈黙 -サイレンス-のレビュー・評価・感想

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沈黙 -サイレンス-
9

神は敬虔なる信徒を見捨てたもうたか?マーチン・スコセッシの『沈黙』が信仰の本質を問う…

『沈黙』は、2016年に公開された叙事詩的歴史劇映画で、監督はマーチン・スコセッシ、脚本はジェイ・コックスとスコセッシ自身。原作は作家・遠藤周作の1966年の同名の小説作品です。長崎に設定された場面は、実際には台北と台中のスタジオを使って台湾で撮影されました。映画の出だしから、アンドリュー・ガリフィールド、アダム・ドライバー、リアム・ニーソン、浅野忠信、チアラン・ヒンドゥが登場します。筋書きは、17世紀に2人のイエズス会の聖職者がポルトガルからマカオ経由で江戸時代の日本に赴くところから始まります。彼らに与えられた任務とは行方不明になった師を探し出し、かつ日本にカトリック・キリスト教を布教することでした。ストーリーの背景にあるのは、徳川幕府に対する島原の乱(1637-1638年)中に日本のキリスト教徒に加えられた弾圧と迫害です。日本人の信徒たちは弾圧から逃れるために「隠れキリシタン」になりました。スコセッシによるこの作品は、遠藤周作の同名に小説を映画化したものとしては第2回目となります(最初は1971年でした)。
スコセッシがプリプロダクションに25年以上にわたって情熱を注ぎ込んだこの作品は、2016年11月末にローマで世界初公開、翌月末には米国で公開されて批評家から絶賛されました。米国のアカデミー賞では最優秀衣装賞にノミネートされました。収益は2200万ドル。それに対して製作費は5000万ドルでした。

沈黙 -サイレンス-
10

神は黙ったままなのか?日本の小説をハリウッド化した『沈黙 -サイレンス-』

『沈黙 -サイレンス-』という映画をもしご覧になっていないならば、絶対観た方がいいです!
監督は『タクシードライバー』などで有名な、マーティン・スコセッシ。
原作は日本文学を代表する一人である遠藤周作の『沈黙』。
この映画は、多少のアレンジはあれど、原作準拠であり、監督がいかに原作を愛していたかわかります。それだけ凄い作品なのです。

あなたはこう思ったことはありませんか?
「神様がいるなら、なぜ何もしてくれないのだろう?」
実は、この疑問に真っ向から向かい合ったのがこの作品です。

簡単にあらすじをネタバレしない程度に。
キリシタン弾圧の激しい江戸時代の日本に、ポルトガルから宣教師がやって来ます。というのも、彼らの師である宣教師が日本で棄教(宗教を棄てること)したとの報告が入ったためです。
そんな折、窪塚洋介演じるキチジローと中国で出会い、日本に着くと、激しい弾圧のなか信仰を続ける隠れキリシタンたちに出会います。宣教師たちは彼らの信心深さに触れる一方、日本の弾圧の激しさやキチジローの弱さに疑心暗鬼になり、「神よ、なぜあなたは黙ったままなのですか」と呟くようになるのです。

日米超豪華なキャストもこの映画の魅力でもあります。本職は監督である塚本晋也の名演やイッセー尾方の味のある演技などは、海外でも好評です。
ちなみに、塚本晋也のことをマーティン・スコセッシ監督は「同姓同名だろう」とオーディションの際思ったそうです。監督としても世界トップレベルの二人(本作の場合、片方が監督で片方が役者ですね)が創り出した映像は、トレーラーなどでも観ることができますので、ぜひその凄さを堪能してみてください。きっと、映画を観たくなること間違いなしです。

また、原作のラストは難解なのですが、映画ではわかりやすくなっておりますので、「原作の最後が良くわからない」という人にもオススメです。

さて、表題にも書きましたが、「神は黙ったまま」なのでしょうか?宗教に興味がなくても、観終わったらしばらく考え込むこと間違いなしな名作を紹介させていただきました。

沈黙 -サイレンス-
8

神の存在とは。宗教を持たない人も考えさせられる映画です。

原作は遠藤周作というキリシタンの日本人作家により1966年に執筆された小説で、2016年にマーティン・スコセッシ監督がメガホンをとることでハリウッドで映画化されました。

原作でもそうですが、著者の遠藤周作はキリシタンでありながらもただ神を盲信するのではなく、宗教とは、そして神を信じるということとは何なのかを考えさせられる小説を多く執筆しており、固定の宗教を持たない日本人でも深く興味を持てる内容となっております。

舞台は禁教令の敷かれた江戸時代初期の日本。
アンドリュー・ガーフィールド演じるロドリゴ神父が隠れキリシタンたちの手を借りながら幕府に隠れて日本にやってくるところから始まります。

物語が進むにつれ、ロドリゴ神父自身も神の存在に疑問を持ち始める場面は特に深く考えさせられるものがあります。
宗教を持たない我々は「神は何もしてくれない」と思うことが多々あるかもしれませんが、神を信じ踏み絵を断る隠れキリシタンたちが処刑されていく様子を隠れて見るロドリゴ神父は、神に祈るばかりで、次第に「なぜ神はいつまでも沈黙を守っておられるのか」と考えるようになります。

また、日本人俳優も多く出演しています。
字幕映画が苦手な人でも、この映画は字幕で鑑賞することをおすすめします。
窪塚洋介などの日本人俳優の英語セリフをそのまま楽しめるほか、日本語のセリフも多くあるので字幕版の方がお得感を得られます。

宗教や歴史に疎い人でも楽しんでみることができる良い映画だと思います。