滝を見にいく

滝を見にいくのレビュー・評価・感想

レビューを書く
滝を見にいく
7

落ち葉と木の枝で作られた壮大な人間賛歌

『南極料理人』『横道世之介』などをこの世に送り出した沖田修一が監督・脚本を手がけた本作。
あらすじは、バス旅行に居合わせた7人のオバちゃんたちが、登山の途中で遭難する、だけ。それだけ。たったそれだけのプロットに、語りつくせぬ魅力が凝縮されている。初対面ではなんとなく軽蔑し合い、うっすらマウントを取り合っていたオバちゃんたちが、協力して困難を乗り切るうちに、互いを純粋に尊重し合うようになる様子にはなぜだか感動してしまう。
猛獣もいない、悪天候もない、仲間の裏切りや失踪、食料の取り合いや謎の病原菌もない!あるのは秋の低山と、その登山道からはぐれた7人のオバちゃんのみ!ある種の縛りプレイとも言うべきこの状況下で、かくも雄弁な人間賛歌を描ける沖田監督の手腕にはただただ舌を巻くばかりだ。
そして映画の終盤、なんとなんと、この作品らしい"どんでん返し"すらも用意されているから驚きである。登場人物のひとりであるオバちゃんの(全員オバちゃんなんだが)、何気ない一言は見る者全員を「マジかよ」という気持ちにさせるだろう。しかし、だからこそこの映画のタイトルは「滝を見にいく」なのだ。是非ともとんがりコーン片手に鑑賞し、得体のしれない感動と達成感に酔いしれるがよい。