ディア・ハンター

ディア・ハンターのレビュー・評価・感想

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ディア・ハンター
9

ベトナム戦争帰還兵たちの精神の崩壊をリリカルに描いた長編映画『ディア・ハンター』

『ディア・ハンター』は1978年公開のアメリカの戦争劇映画で、監督はマイケル・チミノ。ベトナム戦争での戦闘を経て人生に変貌をきたしてしまった3人のロシア系アメリカ人を描いています。3人の米兵を演じたのはロバート・デニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・カザール。助演でメリル・ストリープ。
映画の舞台はピッツバーグの南、モノガヘラ川に面した労働者の町クレアトン(ペンシルベニア州)とベトナムの地です。この映画の一部、ラスベガスとロシアンルーレットの場面は、ルイス・A・ガーファンクルとクイン・K・レデカーによる映画化されなかった脚本「遊びにやって来た男」に基づいています。製作者のマイケル・デーレィがこの脚本の製作権を買取り、脚本家/監督のマイケル・チミノを雇って脚本を書き直させました。チミノはデレク・ウォシュバーントと共にロシアンルーレットの要素を取り出して、それをベトナム戦争の文脈に置きなおしました。製作は予算超過、スケジュール遅延をきたしたうえに、1500万ドルの製作費を吸い尽くしました。映画の公開後、ロシアンルーレットの場面は沸騰した議論を巻き起こします。映画の製作元であるEMIフィルムが国際配給権を、ユニバーサルピクチャは北米での配給をそれぞれ担いました。

ディア・ハンター
7

戦争と男たちの友情を描いた佳作

ベトナム戦争で傷ついた男たちを描く名作。前半の「君の瞳に恋してる」を歌う若者たちが一転戦場に送りこまれ、ベトナム人の捕虜となりロシアンルーレットを強制させられるシーンは観る者に忘れがたい印象を残します。狂気すら感じられる場面は本作のハイライトともいえるでしょう。この極限状況から何と抜けだす訳ですが、私のように肉体も精神も脆弱なものにとっては絶対に生きては帰れないでしょう。ただ、この映画は3時間を超す作品なので観る側にも相応の気合が必要となることでしょう。これは「天国の門」についてもいえることでしょう。そして2度目のロシアンルーレットのシーン。やりきれない思いが観る者に重くのしかかってきます。そして、ベトナム戦争を題材にしながら戦闘シーンが出てこないのもこの作品の特徴です。前述したこととは相反しますが、とかくロシアンルーレットのシーンばかりが語られがちですが(たしかにこのシーンはインパクトがある)、これはこの映画のワン・オブ・ゼムであってメインテーマは前述の男たちの生き様を描いた作品だと私は感じました。そして哀愁のあるメイン・テーマはスタンリー・マイヤーズの「カヴァティーナ」、アコースティック・ギターはジョン・ウィリアムズ。映画にマッチングした音楽です。