十二人の怒れる男 / 12 Angry Men

十二人の怒れる男 / 12 Angry Men

『十二人の怒れる男』とは、1957年に公開されたアメリカのドラマ・サスペンス映画である。日本公開は1959年。同名の1954年製作のドラマを原作としている。
舞台は父親殺しの嫌疑をかけられた非行少年についての審議が行われているニューヨークのある裁判所の一室。数々の証言により少年の有罪が決定的とされるも、12人の陪審員のうちのただ一人が少年の無罪を明らかにしていくという密室劇。
監督は本作品が初監督のシドニー・ルメット、主演はヘンリー・フォンダ。同名のテレビドラマ版の原作の反響が大きかったために制作された映画であり、テレビドラマ版の原作者レジナルド・ローズが映画版でも脚本を担当した。低予算と少ない日数で制作されたものの、ベルリン国際映画祭金熊賞と国際カトリック映画事務局賞を受賞を受賞。日本でもキネマ旬報ベスト・テンの外国映画ベスト・ワンに選出された。世界中で舞台化されている名作であり、密室劇の金字塔として名が挙がることも多い。日本では三谷幸喜脚本の映画『12人の優しい日本人』の元ネタとしてもよく知られている。

十二人の怒れる男 / 12 Angry Menのレビュー・評価・感想

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十二人の怒れる男 / 12 Angry Men
9

サスペンスの最高傑作!場面展開が少ないのでわかりやすくておもしろい!

映画「十二人の怒れる男」は、1957年に制作されたアメリカ映画です。ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、アカデミー作品賞にノミネートされた「密室劇の金字塔」と呼ばれる名作として知られています。
舞台となるのは、ニューヨークの裁判所の一室。そこで、実の父親を殺した罪に問われている17歳の少年について、12人の陪審員たちが議論を行います。
事件の内容、そして目撃証言や証拠は少年が犯人であることを指し示しているものばかり。どう議論しても少年の有罪は決定的と思われていたが、陪審員8番だけが少年の無罪を主張する。果たして、11対1から議論はどんな展開へ進んでいくのでしょうか?
裁判所の一室の中だけで完結するストーリーで、登場人物もほぼ12人の陪審員のみという内容です(厳密には、オープニングで法廷のシーンや容疑者の少年が映ったり、議論の途中で裁判所の職員らしき人が部屋に入って来たりしますが)。
1つの部屋の中でずっと繰り広げられるストーリーのわかりやすさ、それなのに最後まで引き込まれる展開が続きます。決定的と思われていた目撃証言や証拠の1つ1つに疑わしい点を見つけ、1つ1つ検証していくシーンの連続に見てる側は思わず引き込まれてしまいます。
目撃証言や証拠にすべて疑わしい点を指摘して終わりますが、少年が有罪か無罪かははっきりとされずに終わります。この終わり方も見ている側が考えさせられる展開で、映画を見終わった後まで心をつかまれてしまうことでしょう。
そして、ラストシーンに陪審員が別れを言うシーンがまた印象的。お互いに名前を名乗って別れます。名前さえ知らない初対面の他人同士での議論だったということに、ここで改めて気づかされるのがまた強い印象を残す名作ですね。

十二人の怒れる男 / 12 Angry Men
10

十二人の怒れる男

低予算で、モノクロスタンダードの代表的な作品。
ほとんどが部屋の中でのやり取り。
一人の少年の親殺しの裁判をめぐる緊迫のドラマで、陪審制度の理想と現実を描いた歴史的な名作である。
12人の男たちは実に様々な人間性を備えた人たちであり、インテリもいればスラム街育ちもいるし、まじめな人もいればいい加減な奴もいる。親殺しと決めつけて、「とっとと片付けてしまえ」という意見に傾いたと思った時に、一人の男が立ち上がる。その男は「少年の命がかかっているから、いい加減な判断をやめて一から真剣に話し合おう」と言う。だらけた部屋に緊張が走り、否が応でも映画の世界に引きずり込まれていく。
日本の場合は多数決で決まるが、アメリカの陪審制度では12人全員が同意しなければやり直しをしなければならない。
一人の男、ヘンリー・フォンダが知的かつ冷静な男を演じている。12人の名優たちの気迫に満ちた演技を見るだけでも見ごたえのある映画だが、ストーリーも素晴らしい。物語は二転三転しながらクライマックスに向けて緊張が高まる。見ている私たちもあの部屋で一緒にいるような、疑似体験をしているような心理になる。
素晴らしいストーリーや監督の手腕、実力俳優たちの気迫のある演技。特に最後まで有罪を叫ぶ怒れる男を演じたリー・J・コッブの名演技がこの映画の一番の見せ場。
見るものを圧倒させる見事な存在感。映画史に残る名シーンである。

十二人の怒れる男 / 12 Angry Men
8

小さな部屋で行われる男達の会話劇。思いも寄らない展開に目が離せない。

1人の青年が父親殺しの疑いで逮捕され、その青年を裁く陪審員裁判が行われた。そこに集められたのは、無作為に選ばれた、事件とはなんの関係もない陪審員達。誰もが青年を有罪と決めつけ判決はすぐ決定されるかに思われた。しかし、1人の陪審員の男が異論を唱える。圧倒的不利な状況に、無謀とも思える彼の言葉。しかし徐々に状況は展開していき、無罪の票が増えていく。男達の白熱した議論の先にある結末とは!?

密室の中で行われるおじさん達の議論。画力(えじから)はほとんどないにも関わらず、思わぬ展開に目が釘付けになる映画です。
どうしてこんなにも面白く感じるのか。それは主人公(無罪を最初に主張する男)に観ている側が自然と感情移入してしまうからでしょう。有罪を決めつけている陪審員達は事件に興味がなく、真面目に考えていない人もいます。青年を見下し悪態をつく者も。人の一生が決まる大事な時に自分のことしか考えられない身勝手な男達に、観ている側は怒りを覚えるのです(普通に考えれば有罪側の陪審員の気持ちも理解できる者でもあるのですが)。そんな彼らに立ち向かい、論破していくのがとても痛快なのです。
話し合いの中で真実が浮かび上がるようなストーリーはとても緻密で、観ていて本当に面白いです。ぜひご覧ください。