バンデット -偽伝太平記-

バンデット -偽伝太平記-のレビュー・評価・感想

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バンデット -偽伝太平記-
9

読む人に元気を与える

物語の舞台は、鎌倉時代末期から南北朝時代です。
当時の幕府は力を失い始め、徳川家康が天下統一するまでの、長い戦乱の時代が幕を開けた頃です。主人公である石は、下人(ほぼ人権無しの召使)から逃げ出した先で、猿冠者と名乗る謎の男と出会います。博識で武芸も優れた猿と出会い、自分の国が欲しいと思った石は、二人で国を手に入れる為に旅に出ます。
それ以降は、俺こそ天下を取ると名乗る、貴族、武士、商人、果ては時の皇室の一族まで巻き込んだ、バトルロワイヤル状態です。時の権力者である後醍醐天皇や北条一族、楠木正成、後に足利幕府を開く足利一族など、普段スポットが当たることのない人物たちが活躍することが、このマンガの魅力です。
もう一つは、レビュータイトルの「世の中って不思議だ。自分から人に使われたがる人が多いんだな。」というセリフに代表されるような石たち、低い身分の人物が成り上がって行く展開が魅力です。その立場にあるからこそ思い付き実行できる事で、権力者を翻弄していくシーンは圧巻です。しかし、権力者たちも、ただ翻弄されるだけでなく、圧倒的権力やその立場に恥じない生き方をしようというシーンが対照的になっています。
それぞれが死力を尽くし、人生と戦っていく様子が、読む人に元気を与えると思います。