マージナル・オペレーション

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マージナル・オペレーションのレビュー・評価・感想

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マージナル・オペレーション
8

芝村裕吏原作の小説をキタムラダイスケが作画した漫画、軍事戦略フィクション。

小説を漫画にしている軍事戦略物の物語。ゲーム系の専門学校を卒業した主人公が就職した会社が倒産し、生活に困窮していたところでたまたまネットで見た民間軍事会社に応募し、採用される。タジキスタンの訓練でシュミレーションゲームを行うのだが、主人公には簡単な部類の退屈なゲームで軽々とミッションをこなして行ってしまう。しかし、これは後に、リアルでの軍事作戦を指示(オペレート)していた訓練であることを知る。一時は知らないとは言え無実の人間を殺してしまっていた罪悪感にさいなまれることもある主人公だったが、ぎりぎりで立ち直り訓練を終了する。そして、いざ赴任地へ最初の赴任地はキャンプモリソン。キャンプモリソンでは幼い子供たちが、少年兵として囮や弾除けのように使われている環境で米軍へのテロ行為を行う山賊との交戦が行われていた。そんな中で、管制指揮をとり絶体絶命のピンチを救う主人公はイヌワシと呼ばれて少年兵たちから慕われるようになっていく。しかし、キャンプモリソンが襲撃されて山賊たちにとらえられてしまう。玉砕覚悟の山賊たちに主人公は政府軍に対抗する作戦を授け完遂させる。ここから、主人公は少年兵を率いてアジア諸国を周りいくつかのミッションを成功させたことから子供使いと呼ばれるようになっていく。ここからは子供使いとしての活躍の話になっていきます。設定が面白いので、興味がある人は読んでみてくださいね。

マージナル・オペレーション
9

元ニートが幼い兵士たちの指揮官となり、戦争の現実を生き抜く

戦争を描く作品は星の数ほどありますが、この『マージナル・オペレーション』は特に、少年兵と民間軍事会社をテーマにしたものです。原作は小説ですが、コミカライズ版がとっつきやすくて読み始めるのにはオススメ。

主人公の新田良太(アラタ)はゲーム好きの元ニート。ようやく決意して就職した会社が倒産し、ネットの広告に惹かれて民間軍事会社に所属することになります。
会社ではシミュレーションゲームのようなものばかりをさせられ、それは次第に戦術を組み込んだ複雑なものとなっていきます。
元々ゲームが得意だったアラタは、高い適正をもってそれらを好成績でこなしていくのですが、あるタイミングでそれがゲームなどではなく、実際の戦争を指揮し、敵軍のみならず民間人も自分の指示で攻撃していたのだということを知ってしまいます。
さらに自分の指揮する部隊の中には近くの村から集められた少年兵もいて、アラタはおぞましい戦争の現実と直面するのです。

ただの一般人だったアラタが、戦争や生きることの厳しい現実から目を逸らさず、葛藤を抱きながら少年兵の幸福のために考え抜いてゆくという、重いながらも希望に向かうストーリーです。

何が素晴らしいかというと、きちんと感情移入ができるし現実の重みがある。

主人公の新田良太(アラタ)は30代の日本人で、ただのゲーム好き。物語の最初も、民間軍事会社の怪しげな説明や訓練を受けておきながら、どこか現実味がない様子です。でも、それって普通のことだと思うんですよね。

現実と向き合うことを決めて少年兵の部隊を指揮することになったアラタは、しかしいきなり少年兵を使わなかったり、子どもたちの代わりに戦線に立ったりはしません。
あくまでも指揮官として子どもたちを使い、全員の生存率を少しでも上げることに尽力することで、最終的に「子どもを安住の地に連れていきたい」とアラタは言います。
「この世界は間違ってる」と思いながら、それを正すためには間違ったことをし続けなければならない矛盾……アラタや他の大人たちがそれと対峙するときの葛藤が、本当に面白いです。

また、アラタが指揮している少年兵たちのキャラクターも魅力的です。
アラタのことが大好きなジブリール、いつも元気で世話焼きなジニ、本を読むのが好きなハキムなど、心からこの子たちに生き抜いて欲しいと思うような子どもたちばかりで、戦闘シーンのたびにハラハラします。

楽しみどころがたくさんあるこの『マージナル・オペレーション』、現在はコミカライズ版が月間アフタヌーンで連載中です。単行本も9巻と一気読みしやすい巻数なので、ぜひ読んでみてください。