当て屋の椿

当て屋の椿のレビュー・評価・感想

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当て屋の椿
8

当て屋の椿

大江戸吉原を舞台にしたミステリー。
絵柄は美麗でむちむち肉感的な女体はエロスでたまらないが、エログロ描写がどギツいので容赦なくふるいにかけられる。エロに関しては幼女の凌辱シーンもあるので苦手なら勧めない。
人捜しから物捜しまでなんでも探し物を引き受ける当て屋の椿が、春画師の鳳仙と組んで複雑怪奇な事件を解決していくのだが、トリックよりはむしろどうして惨劇に手を染めてしまったかの動機や愛憎縺れた心情面に比重が割かれている。
エピソード毎のゲストキャラも魅力的で読んでいると自然に情が移ってしまうのだが、死亡率が高いので割とトラウマになる。そういうものだと割り切って読めばダメージが少ないが……椿たちが住む長屋の面々も人間臭くていい味出している。
好きなキャラクターはロリ可愛い孔雀。美女から美幼女まで、女性陣の魅力を最大限引き出している。鳳仙はいわゆるヘタレで押しに弱い性格なのだが、彼の優しさが生き地獄に苦しむ人々を救うこともままあって、理屈屋の椿と好対照。
体内に取り込んだ植物や蜂が短期間で急成長したり、人体構造的にさすがにないだろうという描写も結構あるが、数奇な運命に翻弄された人々の悲喜劇が主体で整合性はおまけだと思えば面白い。

当て屋の椿
8

一味違うミステリー

江戸の街を舞台に繰り広げられる時代物ミステリー。
いきなりお色気シーンで始まるため「エロ漫画なのか?!」と驚いたが、読み進めていく内にそんなシーンは霞んでしまうほど緊張感に富み、また、読者の知識欲を掻き立てる作品に仕上がっている。
ヒロイン・椿のもとに舞いこむ事件はどれも奇想天外、猟奇的で怪談めいたものも多く、一体どう転ぶのかと展開が気になるものばかり。
怖いもの知らずで快活に真相に迫っていく椿、人が良く振り回されがちな絵師・鳳仙、対照的な二人が怪事件に向かう姿にも毎度ハラハラドキドキさせられる。
事件そのものは一貫して不気味な様相を呈しているものの、真相は嫉妬、愛憎、育った環境など現代にもあふれているものばかり。中には切ない余韻を残すものもある。
日本独自の文化がミステリーと融合すると、こうも違った味わいが生まれるのかとしみじみと感じた。

舞台背景について詳細に調べられているため、江戸時代の行事を始め民俗学、日本の文化、信仰などがお好きな方も楽しめるのではないだろうか。
読みながら思わず「へぇ~」とこぼしてしまいそうな知識がたくさん登場し、漫画の底力を感じた。
絵も綺麗で見やすく、ヒロイン椿を始め女性キャラクターのかわいらしさ、取り巻く長屋の住人たちも魅力。
尚、エログロが苦手な方はご注意ください。