ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とは、2000年公開のデンマーク映画。監督はラース・フォン・トリアー。世界的に知られる歌手・作曲家のビョークが主演を務めた事で話題になった。どこまでも救いようの無いストーリー展開とショッキングなラストも相まって、公開後10年以上経った今も尚「後味悪い系、鬱映画」の代表として君臨し続けている。また、作中の楽曲もビョークが手掛けており、その中でも「I've Seen It All」はゴールデングローブ賞、アカデミー賞ともにノミネートされるなど高評価を得た。

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Darkのレビュー・評価・感想

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ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark
8

切ないけど楽しいミュージカル映画

とにかく全体を通して暗くて悲しくて切ない。でも、歌唱シーンは主人公セルマが自分を癒すように、観ている側も癒されるような魅力があります。その歌唱シーンは、セルマが自分を癒すために空想の中で歌っているもの。だから現実ではありえないようなことも起こるのですが、それと現実で起こっていることとのギャップがさらに物語を悲しくさせます。しかし、明るく爽やかで楽しい曲が流れていると、セルマが置かれている現実も忘れそうになります。特に工場での歌唱シーンは必見。機械音から曲が生まれ、セルマが悲しい現実を忘れていく様子が特に理解できました。
セルマが大切にしている音楽と息子のジーンを、最期の瞬間まで守っていたところが本当に心に残っています。最後に自分の命とジーンの視力(これからのジーンの幸せな暮らし)を天秤にかけ、迷うことなくジーンを選んだこと。死を恐れていたにもかかわらず、ジーンの無事がわかったときに死を覚悟したこと。現実的でありながらも強いセルマの姿には心打たれました。
そしてラストシーン。ジーンを思って歌いながらセルマの刑は執行され、歌の途中で体が落下します。セルマの美しい歌声と無機質な音との差は衝撃でした。
ただただ楽しくて面白い映画を観たい、という人にはかなり不向きな映画。しかし、音楽や息子を最後まで愛し続けたセルマの強さがずっと心に残る特別な映画になると思います。

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark
8

後味の悪い映画

とても後味が悪い映画でした。予告ではビョークが歌っており、とても楽しそうだったのに、まさかミュージカル部分は妄想だったとは思いませんでした。辛いときは歌を歌うというのは、彼女なりの対処法だったのでしょう。なんか、見ているこっちは余計辛い気がしましたが、何かを歌で紛らわすということもある話なので、共感できました。目が見えなくなる病だなんて、とても大変そうです。自分だけでも辛いのに、息子にまでその病が遺伝しているなんて、母からしたら自分のせいだと自分が許せなくなるでしょう。そのために必死でお金を貯めたのに、悪い人に騙されてとられてしまって、なんてかわいそうなんだと思いました。そこから落ちる一方で、全然救いがありませんでした。なんだかんだ言って、彼女はきっと助かるよねと思いながら見ていましたが、そんなことはなく、好きな歌を歌いながら処刑されていくなんて、ほんと見た後で落ち込みました。息子さんには強く生きてほしいと願わずにはいられない、そんなラストでした。救いがないし、評価は別れる作品かと思いますが、私は好きな作品です。ひどい話ですが、それが真実なような気がします。最後に希望を与えて終わったのでは、この映画は完成しなかったと思います。

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark
9

彼女の見ていた世界

本作は2000年に、ラース・フォン・トリアー監督により製作されたデンマークの映画だ。
主演にアイスランドのシンガーソングライター・ビョークを据え、一風変わったミュージカル調の作品に仕立て上げている。
撮影もまた変わったもので、手持ちのカメラ撮影にこだわっているため、まるでドキュメンタリーを観ているような錯覚に捉われる。
映画の主人公は、息子の目の病気を治すため昼夜問わず働く移民の女性。
だが、彼女もまた視力を失い始めており、周囲の人間に助けられ、空想と歌によって支えられて生きている。
その日常は淡々としているが、間延びせずに進む。空想を始めると景色の色味が鮮やかになるところも魅力だ。
のびやかな歌声と音楽によって紡がれる主人公の心情は、観ている人へ深い思慮を促す。
しかし、物語はけして明るいだけではない。目を覆いたくなるような現実が次々と主人公を襲う。
友人の裏切り、無実の逃亡、死への107歩が主人公だけでなく、観客の感情をも揺さぶるだろう。
それでも歌い続ける主人公と、彼女を見守る人間達の心遣いは美しく、それでいて物悲しい。
救われず報われない一人の生き方が、何を考え、語り掛けているのか、それを感じ取れれば、彼女の見ていた世界が見えてくるかもしれない。

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark
10

映画史上トップクラスの後味の悪さ

主人公はミュージカルの大好きな弱視のシングルマザーです。夢見がちということと、目が良く見えないということもあってか、工場で仕事中も頭の中で妄想を繰り広げて歌い、踊ります。その妄想シーンに合わせて場面はミュージカルに切り替わるのですが、その場面への入り方が絶妙です。
カメラワークといい、編集といい、演者といい、すべてが感動的といえるほどです。主人公であるビョークの歌唱力も素晴らしいです。
その妄想と現実の落差が映画をより奥行きのあるものにしています。奥行きがあるというかありすぎます。とても暗いストーリーです。救いがほとんどありません。
ビョークはハマり役でとても良い表情を見せます。共演しているカトリーヌ・ドヌーヴも優しく良い役柄です。しかしここまでするのかこの監督は、というくらい酷い話です。ラストを見たら落ち込むことは確実なので、心の準備をして鑑賞に臨むと良いです。悲しくはなりません。ただトラウマになります。メンタルの調子が万全ではない人は鑑賞を見送った方が良いかもしれません。ちなみに元々の台本では息子の目の手術は失敗でした。それをビョークがあんまりだと大反対して映画の結末になったそうです。
まるで悪口を述べているかのようですが、良い映画は見た人の心に何らかの爪痕を残すものです。そういった意味では、この映画は押しも押されもせぬ大傑作です。

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark
10

観終わったあとの喪失感、最高です

大好きなマツコ・デラックスが1番好きな映画としてオススメをしていたので観ました。
全体的に明るい映画ではないのですが、映画の中で急に始まる、主人公であるセルマ(ビョーク)が踊りながら歌うミュージカルのようなシーンには引き込まれます。
息子を女手一つで育てるセルマですが、セルマは生まれつき目に病気があり視力がどんどん悪くなっている状況で、いずれ見えなくなるとのことでした。残念なことにこの病気は息子にも遺伝していたのですが、手術を受けることで失明を回避できることを知り、セルマは息子の視力を守るために必死に働いてお金を貯めていました。セルマの優しい性格に惹かれてセルマの傍にいる人もいて、きっと最後は息子の手術が出来てセルマの目は見えなくなるのかもしれないけども幸せハッピーエンドで終わるのだろうなんて考えていました。
途中の内容をいろいろと省きますが特に衝撃的なのは最後の処刑台に登るシーン。怖くて足が進まないセルマでしたが息子がかけていたメガネを渡され、息子の手術が成功したことをしります。そのことで安心したのかセルマは再び歌い始めます。映画を観終わった後、1週間は立ち直れませんでした。
でも何度も観たくなる映画です。