害虫

害虫のレビュー・評価・感想

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害虫
8

私にとっての治療薬

この映画作品を観た当時、私自身、高校生活や進路のことで嫌悪感を抱いていました。その為、中学校生活をドロップアウトした主人公・北サチ子に共感出来る部分がありました。
父親がいなかったり、母が自殺未遂をしたりするサチ子ほど悪い境遇ではありませんでしたが、その時は無性にこの映画に惹かれて涙を流しました。ほとんど一種の治療薬の様な映画でした。
サチ子を演じる、当時まだ学生時代の宮崎あおいさんがとても美しく、透明感があるのに何処か危うい感じがして、まるで風が吹くと何処へでも飛んでいってしまう綿毛の様でした。
内容自体も、サチ子は居場所が無くて色々なところへ彷徨うためにそう思ったのかもしれません。サチ子を付き纏う中年男性から救ってくれたタカオとの出会いによって、少しずつサチ子が変わっていくのかと思っていましたが、そういった白黒付けた最後ではありませんでした。ですが、逆に私もそれを望んではいなかったので良かったです。何かと無防備で、考えているようで考えていないサチ子の結末は、何となく想像がつきました。サチ子によって周囲が壊れていく様は、タイトル通りサチ子が害虫なのだと思わされました。自分に居場所が無かったり、何かに疲れてしまった人は一度観てみるといいです。