薄桜鬼 黎明録

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薄桜鬼 黎明録
8

覚悟を秘めた男たちと一人の少年の物語

「お前に一つ質問してやる。生きたいか」中山道で浪士に襲われ、行き倒れていた少年・井吹龍之介。そんな井吹を拾ったのは、壬生浪士組として上洛途中だった芹沢鴨だった。怪我の治療を受け、目を覚ますと、そこは土方歳三をはじめとする、本物の武士を志す男たちが集う宿舎だった。その上、拾われた恩を返すまで、芹沢の”犬”として働くことを命じられた井吹。幕末の動乱の中、覚悟を秘めた男たちと一人の少年の物語です。

幕末の動乱期、池田屋事件で京に名を轟かせた新選組。新選組が「新選組」という隊名を拝命する前、まだ壬生浪士組だったころのお話が中心です。芹沢鴨をはじめ、近藤勇、土方歳三、沖田総司など、歴史好きにはたまらない面々が勢ぞろい。乙女ゲームが原作ではありますが、史実に沿って話が進んでいくため、幕末好きな私は一気に引き込まれました。「もしかしたら、こんな会話実際にしていたんじゃないか」と思うと、「壬生の狼」と恐れられた壬生浪士組隊士たちがかわいく思えてきたり。幕末の混乱の中、本物の武士を目指した男たちはどんな想いを胸に秘めていたのか。中山道で行き倒れ、懸命に生きることをしていなかった主人公・井吹龍之介の心も、そんな男たちの覚悟に触れ、少しずつ変化していきます。なぜ男たちは「本物の武士」を目指すのか、そして恩返しを命じられた井吹はその後どうなっていくのか。歴史好きも、そうでない人も、「懸命に生きる」とはどういうことなのか、考えさせられる作品です。