女の子の食卓

女の子の食卓のレビュー・評価・感想

レビューを書く
女の子の食卓
10

食べ物の思い出が甦るショートストーリー、一度は手にしたい「女の子の食卓」

集英社発行の月刊誌クッキーで連載されていた「女の子の食卓」は、1話16ページ程のオムニバス形式のショートストーリーで、じわりと心に残る話が多く、連載が終了した今でも思い出深い作品です。
1巻掲載のアイスクリームのエピソードは、スイミングスクールの帰りに自販機でアイスクリームを買うのが楽しみな小学生・郁が主人公です。両親の離婚のため別々に暮らす母親が突然スクールに現れ、郁にアイスクリームを渡そうとしますが、郁は新しい母親の手前、いらないと言ってしまいます。しかし郁が無理をしていることに気付いた継母が、今度郁と母親が会う機会を作ると言い、郁は本当に食べたかったのはあの母親が渡そうとしたアイスクリームだと思います。
2巻掲載のマカロンのエピソードは、女子中学生同士のほろ苦い友情の話です。一度は仲良くなりかけた2人ですが、それは繊細なお菓子のマカロンのように壊れやすいものでした。
6巻掲載のエピソードに珍しい食べ物が出てきます。私はこの作品を読んで初めて知ったのですが、アフォガートといって器にバニラアイスを盛り付け、上からアイスコーヒーを注ぐというものです。作中では甘いような苦いような複雑な味、と評されていました。ちなみにアフォガートとはイタリア語で溺れる、という意味、アイスがまるでコーヒーの中で溺れているように見えることが由来です。このエピソードでは彼氏を好きにも関わらず別れを告げた女子高生が出てきましたが、彼と付き合っている自分はアフォガートのようだと意味深なこと場を残しました。
「女の子の食卓」の単行本は全8巻、どこから読んでも入りやすく、エピソードも余韻が残る感じで味わい深くオススメです。