妖怪の飼育員さん

妖怪の飼育員さんのレビュー・評価・感想

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妖怪の飼育員さん
9

パロディの天才

『妖怪の飼育員さん』とは、「動物園」ならぬ「妖怪園」を舞台にした漫画である。
何が面白いか、とひと言で言うのは難しい。物語の構成、「妖怪」を現代にあてはめるリアリティ、どこか憎めないキャラクター、漫画的なギャグセンス、妖怪一人一人に一言で言い表せない人生…いや妖怪生があり、非常にリアルな作りになっている。絵も緻密で丁寧でとてもうまい。そして、パロディのレベルが物凄く高く、パロディだけで笑えてしまう。もちろん、飼育員たちのキャラクターも様々で、奥が深く、とてもリアルな描写なになっている。公式の紹介文に「人間ドラマの名手、藤栄道彦」とあるが、まさにその通り、どんなキャラクターも深く丁寧に正しく描く力を持っていて、そのうえで漫画を作る力もあるという「天才」だ。
ただ、少しパロディが多すぎて、落語のような感じになってしまっているのは若い人にはピンと来ないかも知れない。もう少しファンタジー寄りでいいのでは? と思うこともある。また、パロディは、後の時代から読むと古臭くなってしまうが、この漫画の内容自体は面白いので後世にも残ってほしいが、あまりパロディをしすぎると後世の人が困るかな、という印象をもらった。