彼に依頼してはいけません

彼に依頼してはいけませんのレビュー・評価・感想

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彼に依頼してはいけません
7

鮮やかに描かれる、新感覚ミステリー!!

『エンパス』の能力を駆使するモグリの探偵・鏡キズナが、相棒・御堂眞矢と事件を解決させていく!
『エンパス』とは人より感受性に富んだ人のことを指し、キズナは人を観察することや思い入れのある物に触れることで、その人物の感情や思考を理解したり、能力を手に入れたりすることができるとされています。
本作は、関係者の心情から事件を読み解いていく、新感覚のミステリーです。
また、漫画・アニメ・ゲームなど様々なメディアで人気のイラストレーター・雪広うたこが、ストーリーも含め全て一人で構成した初の創作作品としても注目されています。
「宝石商リチャード氏の謎鑑定」の作画でミステリー作品に携わっていただけあり、難解なトリックが次々と出てくる点は、初のミステリー作としては高評価だと思います。
心情描写に重きを置いていますが、思考するだけの推理モノではなく、街を奔走したり、対立するものを倒したりといった、アクションさながらのアクティブなシーンが満載なのも見所の一つです。
なんと言っても『描写が美しい』!!その一言に尽きます…!!
数々の書籍やCDジャケットを担当してきただけあって、登場人物のファッションクオリティはとても高いです!
現代の流行ファッションだけでなく、イベントコスチュームやアンティークまでさまざまなジャンルに冴えわたるハイスペックさは、一コマ一コマを切り取っても美しいイラストレーションとして楽しめます。
素性に謎が多いメインキャラ・キズナと眞矢ですが、寝食を共にしたり、濃密なスキンシップが多かったり、真意の掴めない発言が度々見られたりで、一部から「BL作品…?」との疑惑も多い本作。
客観的に見ても「いやいや…同性の友情間ではそれはないんじゃないか??」と見ているこっちが恥ずかしくなるようなシーンが多々あります。
が、前述の通り容姿の美しさにカバーされてしまい、見ていて嫌な気分になることはありません。
眞矢の家族背景が徐々に明らかになるにつれて、二人の関係性も少しずつ窺えるようになってきますが、お互いをどう思っているかは謎に包まれたまま…。
「匂わせでもBLはムリ!!」って人にはおすすめできないかな…?
今後の展開にも注目していきたいと思います!!

彼に依頼してはいけません
10

最強の美人やイケメンが活躍する話

私は探偵フリークなので、この作品から「雪広うたこ」という存在を知ったが、既存のファンからすると「あの雪広うたこが探偵もの???」という感じになったのではなかろうか。
主人公は「エンパス」という、今話題の「特性」を持っている。「エンパス」とは、私が考えるに、「自分の思考を忘れっぽい人」のことだと思う。ADHDやADDの傾向が強い人はこの「エンパス」の可能性があるのではないだろうか。作中では日本人の五人に一人がエンパスだと言っているので、「ADHDやADDの傾向が強い人」というのは日本では5人に1人居ることになる。主人公はその特殊能力「エンパス」を使い、様々な人格に「変貌」する事で、ある意味ホームズ的な「演技」をすることが可能になっていという秀逸な作りだ。
さて肝心の内容だが、若い人向けにしてはかなりしっかりと取材されており、非常によく出来ている。世界観もほぼ、ハードボイルドでまとまっており、人格的にも雪広うたこ氏の価値観に合っているのだろう。読んでいて「この人挫折したことねーんだろうな」と思わせるほどの「ハードボイルディ」を感じさせる。自分に自信のある美男美女の諸君やまだ挫折を知らない少年少女諸君にお勧めの作品だ。