ヒメアノ~ル

ヒメアノ~ルのレビュー・評価・感想

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ヒメアノ~ル
9

毒にも薬にもならない作品を読むよりは

古谷実の漫画作品に共通して描かれている事は、「なんでもない日常に迫る狂気」であると思います。「稲中卓球部を描いた人だから、ギャグ漫画じゃないの?」と思われるかも知れませんが、ギャグこそ狂気であると考えられます。どういう事かと言いますと、普通の人が普通の事を言っていても面白くなくて、そこにはある種の狂気性をはらんでいないと笑えないという事です。
例えば、同作者の作品「わにとかげぎす」では、主人公がスーパーの屋上で裸でランニングをするという描写があり、それだけで面白いし、大抵、かわいい女の子が冴えない主人公に恋をするという展開になるのですが、女の子の暴走具合とかも笑えて仕方ありません。
普段は普通にしているのに、たまに見せる狂気がおかしくて笑えてしまうという構図です。
まあ、結局は人間何かしら狂気性をはらんでいるという事が全作品に語られるテーマだと思うのですが、この「ヒメアノ~ル」は、その狂気性が社会通年的には「害」であった場合の人の話ですね。いわゆるサイコパスです。
他人には理解されない習性というのが、皆さんも何かしらあると思います。
足の爪のニオイを嗅ぐのが好きだったりとか、髪の毛は洗わないようにしていたりとか。それがたまたま人殺しだった場合は、どうなのか。その苦悩の話です。
明るい話ではないですが、サスペンス要素とギャグ描写のバランスが良いので、シリアスになりすぎず、読みやすいのがポイントと思います。