劇場版 のんのんびより ばけーしょん

劇場版 のんのんびより ばけーしょんのレビュー・評価・感想

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劇場版 のんのんびより ばけーしょん
9

最高の癒やしであり、極めて巧みな「日常もの」

田舎に住む少女4人が家族や友人とともに沖縄旅行へ行く。地元の女の子と出会い、島を案内してもらう。あらすじといえばこの程度で、伝説の秘宝を探しに行くわけでもなければ、異界から来た女の子と出会うわけでもない。多分、ネタバレをされてもほとんど影響がない普通すぎる物語だ。
「そんな作品つまらない」と思うかもしれないが、なにも起こらないことが最高に癒やされる。癒やしを求めている人にこそおすすめの作品だ。
また、単調な物語だからこそ随所での演出力の高さは舌を巻くものがある。特に、ほかのアニメ作品ではほとんど見ることがない、大胆で思い切った「独特の間」がすごい。この間のとり方は、熟練のコントや漫才に通じる笑いの起こし方だ。
そのほか心理描写も丁寧で、まるで自分も旅行をしているかのように「誰もが感じたことのある、旅行中の喪失感」を追体験できる。とはいえ、そこにも露骨に涙を狙いにいく今生の別れなどはない。旅のなかにありふれている日常的な別れなのだ。
作画も映画作品だけあって一切の手抜きがなく、沖縄の美しい自然の風景が丁寧に描かれている。下手な芸能人の沖縄で行われるバラエティ番組などよりも、よほど沖縄へ行きたくなるはずだ。

劇場版 のんのんびより ばけーしょん
9

のどかな時間を切り取った秀作

本作品は、もともとは田舎の分校に通う4人の少女を中心とした日常系漫画で、「のんのんびより」と「のんのんびより りぴーと」とこれまで2回アニメ化が行われてきた作品の劇場版です。
ひょんなことから町のデパートへ出かけることになったれんげ達、そこで越谷家長男の卓がくじ引きで沖縄旅行を引き当て、れんげ達で出かけることになります。そして、沖縄の地で新たな出会いと別れがあり少女たちは一夏の思い出を作る、というのが大筋です。
これまでの山奥の田舎とは異なり、沖縄という極彩色な土地を舞台にしているため、まず繊細かつ色鮮やかな背景美術には目を奪われることでしょう。また、作品本編における人物関係や、感情変化の機微を繊細に描き分ける手法は実に素晴らしいと思います。特に今作は「友情の形成」をテーマにしているようで、田舎で同い年がいない状況の少女が、違う土地の同い年の子と出会ったらどうなるか?という問いの設定から、友情の芽生え、そして別れに至るまでのプロセスを丁寧に描いているところに好感がもてます。また、単純に子供の頃の夏休みの思い出を回想するきっかけにもなるノスタルジーに溢れた作品であり、アニメや原作を知らなくても全年齢で楽しめる映画といえるでしょう。