そして父になる / Like Father, Like Son

そして父になる / Like Father, Like Son

『そして父になる』とは、”赤ちゃん取り違え事件”を扱った、2013年制作の日本映画。TVドキュメンタリー出身の是枝裕和が監督・脚本・編集を担当し、主演の福山雅治が初の父親役を演じた。第66回カンヌ国際映画祭では見事に審査委員賞を受賞し大きな話題となった。ある日、突然6年間育てた息子が病院で取り違えられた他人の子どもだったと知らされた対照的な2組の夫婦が、過酷な決断を迫られ、それぞれに葛藤を繰り返す中で本当に大切なものを学んでいく姿を描く。

そして父になる / Like Father, Like Sonのレビュー・評価・感想

レビューを書く
そして父になる / Like Father, Like Son
7

福山くんが嫌なやつ。

福山雅治さんが、だいぶ嫌な役だなと思いました。あんな夫、私は嫌です。
でも、普通の人はこんな感じかもしれません。いや、子供を交換するなんて考え、浮かばないと思います。
もう一つの家族の方は、家族への愛はすごくある人だったけど、金、金、金でそれはそれで嫌だなあと思いました。
リリー・フランキーさんは、ほんとせこいやつの役がうまいなと思いました。
病院もちだからと、両家族話し合いのフードコートで食べまくり、お持ち帰りもして、おもしろいです。
こういう、ちょっと嫌な奴に見える演出がよいです。子どもたちはほんとかわいそうでした。
いきなり家を変えろと言われても困ってしまいますよね。
リリーのほうに行く子も、福山のほうに行く子もかわいそうだし、特にリリーの子は兄弟とも離れ離れで、寂しいだろうなと思いました。
福山も、新しくきた子には父らしくできたのに、それがもっと先にできていれば、もともと入れ替えましょうみたいな結論にはならなかっただろうにと思いました。
迎えに行ったときの息子の態度は当たり前だと思いました。
今回は入れ替え事件のあった話だけど、そうじゃない、血の繋がっていた家族でも血が繋がってるから家族なんじゃなくて、家族になっていくものなんだなと思いました。

そして父になる / Like Father, Like Son
7

最後は観る者に任せる映画

福山雅治演じる絵に描いたような幸せなエリート家庭を妬み、離婚したばかりの女性看護士は出産したばかりの子供をワザと取り替えます。
看護士はとんでもない、取り返しのつかない事をしたのですが、そこにはあまりスポットが当たってません。
子供が本来の状態に戻し、試しに一緒に生活したり試行錯誤をします。
普通ならドロドロ滋賀血のストーリー展開ですが、比較的淡々とドキュメンタリー風にストーリーが進んでいきます。
取り換え先のリリー・フランキー一家は経済的に恵まれていなく、街の小さな家電店を営みながら自由奔放に生活しています。
見栄やプライド、エリート家庭の福山雅治一家より金は無くても元気で明るく家族みんなで生きるリリー・フランキー一家の方が幸せそうに見えます。
この対比が映画の肝になっています。
リリー・フランキーっていつも飄々としていて掴みどころがないのですがいい役者さんです。
こんな境遇でもそれを甘んじて受け入れる基本みんないい人で安心して観えました。
是枝監督らしく映画の最後は、2つの家庭がこれからどうするのか想像してもらうかのように観る者に丸投げして終わります。
成長、葛藤、苦悩、触れ合い、こだわり人間ってなんだろう、幸せって何だろうと考えさせられました。

そして父になる / Like Father, Like Son
10

涙なしには見られない。

『そして父になる』は、万引き家族でアカデミー賞を受賞した是枝裕和監督が監督されたものです。テーマは子供入れ違いによって、実の息子と過ごした6年間をとるか、それとも実の我が子との血を選ぶのかということです。
福山雅治さんが演じる父親が、実の息子との血を選ぼうとするのに対して、奥さんはこれまで育ててきた息子を簡単には手放せないと葛藤します。一方の子供は相手の親子と過ごす中で徐々に打ち解けて行きながらも、大人たちの表情から不安感を募らせて行きます。

是枝監督は子役の演技に対して台本は渡さず、その場で教えたセリフを感じたままに演じてもらうことで、よりリアルな子供の表情を表現することができ、観ててる側もそんなリアルな子供の演技に引き込まれて行きます。紆余曲折を経て最終的には子供達は定期的に元の親に面会する機会を設けることで、子供の交換は行わないことになりましたが、今の日本の世の中にも決して起こらないとは言えない事象なだけに、病院の在り方から家族とは、一緒に過ごした時間が築いた絆や愛なのか、それとも将来自分に似てくるという血筋なのか、はたまたお金で全てを解決することが子供にとって一番幸せなのか、自分の家族の愛の形を再確認することができる、とても素晴らしい涙なしには見られない感動作です。