少女終末旅行 / Girls' Last Tour

少女終末旅行 / Girls' Last Tour

「少女終末旅行」とは、WEBマンガサイト『くらげバンチ』で連載された作者「つくみず」による漫画作品。2017年に「WHITE FOX」製作でアニメ化。文明崩壊が起こった終末世界を主人公の「チト」と「ユーリ」は半装軌車「ケッテンクラート」に乗って旅をする。ほのぼのした日常系の作風でありながら、時折垣間見える世界観が切ない。

少女終末旅行 / Girls' Last Tourのレビュー・評価・感想

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少女終末旅行 / Girls' Last Tour
8

たった2人の少女が旅の果てに見たものは

少しゆるさを感じさせる少女2人の物語は、無機質なガラクタの中をずんずん突き進んでゆく。ただひたすらに、上に上にと登ってゆく。

世界から人々が消え、2人の少女が『その痕跡』をたどりながら、ときに迷い、ときに喜び、そして心を揺さぶられる。

限りある食料が尽きたら旅が終わってしまうかもしれないのに、そんな厳しさを感じさせない2人のやり取りに笑ってしまうこともしばしは。読者の私たちが知っていることを2人は知っていたり知らなかったり。読み進めて行くうちにいつの間にか2人の世界に入り込んで、これはなんて書いてある?この建物にはどんな生活があったのか。

今ある文明の先、そして2人の世界に至る過程に、一体何があったのか。時々ものものしさを感じさせる描写もあり、ぎょっとしてしまうことも。それでも2人の『少女らしさ』が表現を和らげ、世界を優しいものに見せてくれる。

2人きりの旅だけれど、旅の途中で『何か』と出会うことの不思議さにも驚く。2人きりな事の方が驚くべきなのに、『何か』が存在していたことにまた、それまでの時間に想いを馳せる。『何か』は2人の前に現れて、過去何があったかの片鱗を見せてくれる。

出会うたびに2人は考え、そしてまた2人に戻る。2人の旅はどこまで続くのだろう。

少女終末旅行 / Girls' Last Tour
10

終末を旅する。

文明が崩壊した後の終末世界を、二人の少女がケッテンクラートという車両に乗り、廃墟となった都市を旅し、様々な文化、宗教、兵器の痕跡を発見する。チトという少女は知的で冷静であり、本が好きだ。その為、賢く、車両の操縦や整備をこなす等手先が器用だ。ユーリという少女は、のんびりとした性格で、食欲が旺盛、読み書きは苦手だが、運動神経が良く、銃の扱いも得意だ。そんな二人が道中で出会った僅かな生存者である、地図を作る事を生き甲斐とする男性『カナザワ』、飛行機を造り、空を目指す女性『イシイ』等と出会い、交流を経てその世界の上層を目指す物語だ。上層を目指す道中、二人は『エリンギ』(原作では名前は出ていない)という生物により、衝撃の事実を知る事となる。それは、『地球が終わってしまう』という事。エリンギ達が上層以外の終末世界を廻った結果、生きている人間はチトとユーリのみであるという事だった。つまり、以前出会ったカナザワとイシイは死亡しているという事になる。それでも二人は、『お互いがいたらそれでいい』と手を握り合う。更に上層を目指す二人だが、僅かに残っていた食糧は尽き、二人の足であり、チトが大切にしているケッテンクラートまでも壊れ、動かなくなってしまう。 懸命に修理するチトであったが、どうしてもそれは不可能だった。ここから彼女達は、荷物になる余計な物を捨て、徒歩で上層を目指す事になる。不安になりながらも二人が辿り着いた上層は一面の雪原と黒い謎の石だった。チトは「私達はこれで正しかったのかな」と弱音を吐くが、ユーリは「そんなのわからないよ」と言い、「でも、生きるのは最高だったよね」と続ける。二人は寄り添い、黒い石に凭れて毛布を被って眠りにつく。物語はそこで終わっている。
しかし、ある考察によると、『二人が凭れた黒い石は時空を転移する装置で、二人は別の、食糧に溢れる世界に辿り着いたのでは?』という意見もあるので、この考察が事実であれば、二人の旅は正しかったと言えるのではないかと思う。

少女終末旅行 / Girls' Last Tour
10

終末旅行

タイトルに惹かれてAmazon Prime Videoで視聴しました。最初はほのぼのしたアニメだと思っていましたが、それだけではないと感じました。そう感じた理由は、登場人物として主人公のチトとユーリの2人しか出てこないことです。一言でこの作品を表すと、人のいない街をチトとユーリの2人が旅をする、という内容で、それだけを聞くととてもほのぼのしています。しかし、人がいない理由は度重なる戦争の結果であるという重い経緯が裏に潜んでいます。しかも、そのこと自体は作品内では断言されていません。そこがほのぼの系の他のアニメと全く違うような気がします。感覚で言うと『けものフレンズ』に近い感覚でした。
また、なぜ二人は旅しているのかという理由も、おじいさんから上を目指しなさいと言われたからでした。旅をしても救われるとは限らない、しかし救われるかもしれないという精神的に不安定な状態の中でも、楽しそうに懸命に生きている姿にグッときました。
アニメ版ではなく漫画版の最後では最上階にたどり着きますがそこには何もなく、そこでユーリの言った「生きるのは最高だったよね」という言葉が泣けます。またアニメ版はとても映像がきれいで音楽も良いので見やすいです。

少女終末旅行 / Girls' Last Tour
9

終末世界を生き抜く二人の少女のゆるい冒険記

原作者はつくみずで、アニメは全5巻ある原作のうち4巻までの内容を映像化している。
内容は人類がほぼ絶滅した終末後の世界をチトとユーリの二人の少女が、食料を求めてサバイバルしながら多層構造になっている都市の上層を目指すというもの。
荒涼とした終わった世界を生き抜く設定だが、悲壮感やシリアスさはほとんど無く、日常アニメのようなのほほんとした作風になっている。原作者のポジティヴな諦観と虚無主義がベースに存在していると言えるだろう。
状況は笑えなくても、肩をすくめてただ一人となりにいるパートナーと向き合っていく。この作風を好きになれるかどうかが、本作に入り込めるかどうかの分かれ目と言える。
アニメ版の特筆すべき点として、サウンドデザインのこだわりが挙げられる。
銃声、銃弾が構造物に当たり弾かれる音、水の音、控え目にくぐもらせた声優の声、適切に編集されたサウンドが世界観に大きな説得力を持たせている。
特にリアルな機械音やノイズは崩壊した都市の重厚感を表現するのに大きく寄与しており、全体的にのほほんとしたストーリーの中にあって、ここが終末後の世界であることを説得力を持って随時認識させてくれるようになっている。
単なる日常美少女アニメとして視ると登場人物の少なさもあって余りオススメ出来るものではないが、「美しい虚無」というテーマに興味を持ったなら、是非とも視てみてほしい作品である。

少女終末旅行 / Girls' Last Tour
8

無心で観られるが気づいたらのめり込む

人類がほぼ死滅し、文明が崩壊した都市で、チトとユーリという2人の女の子が祖父の言葉を頼りに都市の最上部を目指す話です。
2人乗りの小さなキャタピラ式の乗り物でひたすら、ひたすらに移動。
移動をしながら随所で、人類の残した食糧や燃料、有事に備えての銃弾を補給しながらただひたすらに都市を登ります。

道中、二人は生き残った様々な人に出会います。
たった一人で手書きの地図を書き上げようとする人、飛行機を開発して遠くへ飛ぼうとする人、果ては感情に芽生えつつあるロボットなど。
彼ら彼女らとの出会い、別れを経験しながら、人とは何か、戦争とは何か、生きるとは何か、というテーマの本質に迫ります。
単語だけ並べるとヘビーな話に思われがちですが、この作品は少女2人の織り成すゆるい雰囲気が雰囲気の重さを相殺してしまいます。
しかし、少女2人のやりとりから多くのことを考えさせられます。
人とは?戦争とは?生きるとは?

食事や娯楽などさまざまなものが飽和した現代では触れることのできないであろう少女二人の思考は必見です。
もともとはネット連載の漫画でしたが、人気のあまり単行本化に加えてテレビアニメ化もされました。
漫画はもちろんですが、テレビアニメ版もぜひ視聴してみてほしい作品。おすすめです。

少女終末旅行 / Girls' Last Tour
9

現代の闇と未来を見据えて

戦場から少女二人がケッテンクラートという、キャタピラ式のバイクのような乗り物で旅を続ける漫画(アニメ)です。
これだけ聞くと「どこに楽しい要素が?」と思いがちですが、人類が人類により滅びた世界で、たった2人「生きる事とは何か」「本当に大切なものとは何か」「教育とは」「大人とは」「世界とは」「考えるとは」「生きるとは」という、あらゆる現実に立ち向かい、それぞれ答えを見つけたり、見つけない事を選んだりする様はタイトルに反して非常に濃い内容です。

漫画も短いですが、アニメもショートなので観たいときに気軽に観られるロードムービーのような部分もある為、双方のいいところを取ったような作品です。
戦争で荒廃した世界が舞台で、軍服をきた少女が銃を使ったりサバイバル生活を送る。
そういう類が好きな方も「少女」である事を忘れる程見ごたえがある内容です。
また女性にもかなり入りやすい絵柄と、難しい事(考えれば考える程難しい、哲学的ともいえますが)は特にないので男女一緒に「世界の終末」について「生きること、大切なものとは」を改めて考えさせられる、良い作品です。

言葉が少ないこともあり、世界的にも発信して欲しいと願う秀逸な作品です。