谷山浩子 / Hiroko Taniyama

谷山浩子 / Hiroko Taniyama

谷山浩子とは、日本のシンガーソングライター。代表曲はNHK「みんなのうた」で流れた「まっくら森の歌」「しっぽのきもち」など。作風は小さな子でも聞ける童話的なものから歌謡曲チックなもの、シュール・ブラックメルヘン・感動系なものまで様々。物語が見えてくるようなファンタジーな歌詞が多く、谷山浩子ワールドを繰り広げている。2012年にデビュー40周年を迎えた。

谷山浩子 / Hiroko Taniyamaのレビュー・評価・感想

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谷山浩子 / Hiroko Taniyama
8

色褪せない少女の心、歌い続けて半世紀

中学生の頃から活動を続ける息の長い歌手・シンガーソングライターの谷山浩子。
数多い提供曲の中では、映画『ゲド戦記』の挿入歌「テルーの唄」(歌:手嶌葵)が有名でしょうか。彼女自身が歌う自作の歌であれば、あの『みんなのうた』で知らずに聴いた方も多いかもしれません。

「まっくら森の歌」や「そっくりハウス」などご存じでは?実はここに挙げた2作、『みんなのうた』の子ども時代のトラウマソングとしても有名だったりします。
甘い声で伸びやかに歌われる彼女の歌は一見可愛らしい印象ですが、それだけではありません。どこか不思議な雰囲気の歌詞ゆえか、メロディーゆえか、はたまた彼女の自在な声の魔力のゆえか…。この世ならざる世界を垣間見るような、いつのまにかそこにとらわれてもう逃げられないような、そう思わせる歌なのです。

前述の「そっくりハウス」を見てみましょう。主人公は小さな女の子。真夜中目が覚めたら、部屋の真ん中に”小さなおうち”があります。
それは女の子の住んでいる家と何もかもそっくり。窓からのぞきこむと、小さなお父さんやお母さんまでいて、いつも通りの日常を送っています。子ども部屋には”わたしとおんなじパジャマをきて こちらにせを向けて何かをのぞいて”いる小さな女の子。彼女がのぞいているのは”ほんとに小さなまど”です。
”おうち”の中にも外にも今女の子がいるのと同じ”うち”があり、どの家も”小さな女の子”に、窓からのぞき込まれているという永遠に続く入れ子の世界。
女の子の立場で谷山浩子があどけなく歌うこの「そっくりハウス」。当時の子どもたちの多くが何とも言えない怖さを味わったに違いありません。

ここまでは「怖さ」を軸にご紹介しましたが、彼女の歌の魅力を語るにはそれだけでは足りません。猫好きにはたまらない「しっぽの気持ち」、アンデルセン童話の世界を下敷きにした「カイの迷宮」、暗く美しく幻想的な「王国」、ナンセンス文学のような「意味なしアリス」。かと思えば優しく明るい恋を歌う「カントリーガール」、さらに聴く人に「何を言っているかわからないよ…」と思わせる狂気の「まもるくん」などなど。彼女の世界の幅広さには驚くばかりです。

どの作品にも共通するのは、「好きなものは好き!」と主張する、ワガママで奔放なみずみずしい少女の心であるような気がします。人は選ぶかもしれませんが、とにかく、一聴の価値あり!です。

谷山浩子 / Hiroko Taniyama
9

独特な世界観に引き込まれていく

谷山浩子は1972年よりデビューし、NHK『みんなのうた』にて複数の楽曲が採用され放送される実績もあるシンガーソングライターです。
楽曲のジャンルはニューミュージックで、可愛らしくファンタジー性の高いメロディが特徴的です。
しかし、ポップで可愛らしいメロディなのに、ダークな歌詞の曲もあり、歌詞の意味を知ると衝撃を受けます。

例えば、ダイエットと言う楽曲は体が痩せるストーリーかと思いきや、視力やドラマ、世間まで自分を取り巻くあらゆるものが痩せていく恐ろしい結末を迎え、聞き終わると背筋が凍ります。

また、ダークな歌詞に合ったダークな曲も存在し、そのような曲は夜一人で聴くと眠れなくなります。
ダークな楽曲の一例として、「ROLLING DOWN」があります。この曲は坂道を登っているぼくを坂の下にいる母さんが「もう登らなくてもいいんだよ」と甘い声で囁いているといった歌詞で、ふるさとに帰りたい気持ちを表しているかと解釈出来ます。しかし、歌詞の最後で下に居たのは母さんじゃないことが判明します。
このように、歌の最後の方でどんでん返しを食らうことが時折あるので、聞いているだけで退屈しません。

明るく楽しい曲から、よく聞くと恐ろしくなる曲まで幅広く楽曲を出している谷山浩子はおすすめです。

谷山浩子 / Hiroko Taniyama
8

フォークミュージックと管弦楽をバックにしたマザーグース

1970年代にデビューしたシンガーソングライターです。NHK「みんなのうた」など子ども番組にも多数の歌を出しているので、「まっくら森」や「しっぽのきもち」など、一度は彼女の曲を聞いたことのある人が多いのでは。また、ジブリ映画「ゲド戦記」の劇中歌として使われた「テル—の唄」の作曲もしています。(劇中の唄は手嶌葵さんが歌っています。)70年代、80年代はフォークミュージックらしい曲が中心でしたが、90年代以降は管弦楽をバックにした曲が増え、音の雰囲気が変わりました。歌詞はファンタジーな設定のものが多いのですが、ただ幻想的で美しいものだけではありません。「身近に潜む怖いもの」「未知なる怖いもの」を表現したものも多く、それを親しみやすい明るいメロディーにのせている「マザーグース」っぽい曲もたくさんあります。独特の歌詞や曲の世界観が合う人は、どっぷりハマれますので、少しダークなおとぎ話などに興味のある方は聞いてみてください。2005年に出したベストアルバム「白と黒」は、まさにその名の通り「明るく美しい世界観の歌」と「ダークでちょっと怖い世界観の歌」両方を集めているので、どんなアーティストなのかを1枚で知る入門編としてお勧めです。

谷山浩子 / Hiroko Taniyama
8

不思議の森のお姫様

谷山浩子の曲は、全体的にふわっとしたかわいらしい感じのものが多いです。彼女のやわらかく優しい声を聴くと、とても癒されます。「みんなのうた」でもよく彼女の歌は流れているので、知っている人も多いのではないでしょうか。しかし、谷山浩子のアルバムを聴いてみると、かわいらしい歌の中に、ときどきぞっとするような不気味な歌が混じっています。私はこれが谷山浩子の真骨頂だと思っています。アップテンポで楽しそうな曲なのに歌詞は恐ろしい話だったり、優しい声で静かに意味不明な歌を歌ったりと、そのギャップがもの凄いのです。ファンの間では「電波系」と呼ばれています。夜ひとりでヘッドホンをつけて聴いていると、本当に怖くなりますよ。「みんなのうた」でも「まっくら森の歌」がとても有名で、美しい絵も相まって「トラウマになるくらい怖い」と言われています。謎の生物「まもるくん」、どこまでも追いかけてくる黒い腕が怖い「逃げる」、一度入ったら二度と出られない「ドッペル玄関」、などがおすすめです!ただ、谷山浩子の曲は、怖い歌だけではなく、辛い思いをしている人を元気づけるような歌や、初々しい恋の歌なども多いです。優しい曲が好きな人も、怖い歌が聴きたいという人にも、谷山浩子はお勧めです!