アオイホノオ

『アオイホノオ』とは、2007年から2008年まで『週刊ヤングサンデー』(小学館)で不定期連載された、島本和彦による学園漫画である。同雑誌が休刊後は『スピリッツ増刊・YSスペシャルVol.2』に1話が掲載され、2009年5月から『ゲッサン』(小学館)で連載された。コミックスは27巻が刊行された。17巻では、被害者の会小冊子付特別版が発売され、作者から暴言を吐かれた漫画家たちがイラストやコメントを寄稿した。
本作品は作者の自伝的漫画である。物語は芸大生の焔燃(ほのおもゆる)が、漫画家を目指し仲間と共に悪戦苦闘する姿を描いている。コメディの要素が強く、実在する漫画家や作品が多く登場する。
2014年に「第18回文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門で最優秀賞、2015年には「第60回小学館漫画賞」の一般向け部門を受賞した。またテレビドラマが監督・脚本福田雄一で2014年7月から9月まで放送され、焔燃役を柳楽優弥が演じた。このドラマでは原作の舞台である、大阪芸術大学が実名で使用された。

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アオイホノオ
8

マンガ好き必読! すべてのオタクたちに捧げられた名作漫画「アオイホノオ」

今回紹介するのは小学館で連載中の大人気漫画「アオイホノオ」。
本作は80年代の大阪芸術大学を舞台に、漫画家を志す青年・焔 燃(ホノオ モユル)がその夢を実現させるまでの物語が描かれています。
「この物語はフィクションである」という体裁こそとられていますが、実際には島本先生が自身の大学生活を題材とした「ほぼノンフィクション」の作品です。そのため、作中には当時連載されていた漫画や放送されていたアニメの話がてんこ盛り。当時を知る古参のオタクたちにはもちろん、日本のサブカルチャーが最もディープで熱量のあった時代を体験したい若きオタクたちにも刺さる内容となっています。
また、本作は主人公である焔燃の物語と並行し、のちに「新世紀エヴァンゲリオン」を作り上げることになる庵野秀明たちが自らの会社「ガイナックス」を立ち上げるまでの経緯が描かれており、これまた全世代のオタクたち必見の内容となっています。
しかし、本作最大の魅力は「80年代のオタク生活を体験できる」ことではありません。この漫画は、すべてのオタクたちに捧げられた漫画であると同時に、すべての夢を追う若者たちに捧げられた漫画でもあるのです。
焔燃は物語が始まった時点では何の実績もなく、才能があるかどうかも定かではなく、「漫画が好き」というだけでこの険しい業界に足を踏み入れたただの若者です。そんな彼が、自分の持つ熱さと勢いだけで往年の名作たちに立ち向かい、時に挫折を味わいながらも夢を失わずに進み続けるその姿こそが、この漫画の本当の面白さです。
時に滑稽で、時に痛々しく、笑いをこらえきれない痛快な語り口で描かれる本作。漫画・アニメ好きのオタクたちはもちろん、情熱だけで険しき世界に足を踏み入れた夢を追うすべての人たちに読んでもらいたい作品です。