ルーム / Room

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2015年に公開されたレニー・エイブラハムソン監督のヒューマンドラマ。17歳の時に誘拐され7年間監禁され続けた女性ジョイと、監禁された“部屋”でジョイが産んだ息子ジャックが、決死の覚悟で“部屋”から脱出する様と、その後に待ち受ける数々の困難を乗り越えていく姿を描く。本作でアカデミー主演女優賞を獲得したブリー・ラーソンと、天才子役と評されたジェイコブ・トレンブレイの、魂の演技が光る。

ルーム / Roomのレビュー・評価・感想

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ルーム / Room
7

こんな事件怖いし、ショック。

母親のお父さんが、子どもを見つける目がすごくリアルだなと思いました。
その子が悪いのではないのに、彼を見ると犯人を思い出すし、いやでたまらないのでしょう。
お母さんは息子のことを愛しているようで、それはとてもよかったと思いました。
ルームでしか、生きてこなかった彼が変わっていく様子がとても細やかに描かれていました。
あんまりすぐに変わらないところがとてもリアルです。
こんな事件はフィクションだけであってほしいけど、こういう事件は実際にあったようだし、とてもショックでした。
なんでそんなことができるのだろうと思います。
お母さんも、逃げることにはあきらめモードだったけど、息子をいつまでも部屋というわけにもいかず、犯人がいつ息子を殺すかもわからないし、逃げようと思ったのだと思います。
あの子は望まれずにできた子だけど、希望になったんだろうなと思いました。
なかなかショッキングで、でもきっとこれからいいほうに変わっていくと思える終わり方をしていていい映画でした。
キャスト陣の演技もすばらしくて、閉じ込められていた女性の情緒不安定な感じもよく出ていたし、おじいさんよりおばあさんのほうが前を向けているのもリアルだなと思います。
子どものなんか小さな声でしか喋られない感じとか、おどおど感もよかったです。

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9

小さな部屋より外の世界が怖いこともある

実際にあった監禁事件をモデルにした作品です。小さな部屋に女性とその息子が住んでいます。母親は高校生の時に誘拐、監禁され、子供はその誘拐犯との間にできた子供。
前半はその親子が、監禁された部屋から脱出するため試行錯誤する様子が描かれ、後半は脱出後の親子や、その周りの人たちが困惑しながらも親子を受け入れようとする様子が描かれます。
誘拐犯との子供でも、女性が母親として息子を大事に思う気持ちが伝わってきました。部屋にいる間に行われる運動。小さな部屋でも、子供にできる限りの筋力をつけさせようとする愛を感じました。
部屋にいる間、息子を必死に守り育てようとしていた女性が、部屋からの脱出後自分の母親がパートナーと仲良く生活していた様子や、誘拐時の同級生の写真、自分の報道などで次第に心のバランスが崩れている様子がとても痛々しかったです。
子供の演技も上手でした。部屋で生まれ部屋が世界の全てだった息子が、外の世界を怖がる様子、心身のバランスを崩していく母親への気持ち、初めての友達…。外の世界を通して、精神的に成長していく様子が本当にうまく表現されていました。
この親子がその後どんな人生を歩んでいくのか、続編が見たくなる映画です。

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9

母と子の絆に嫉妬

ずっと閉じ込められている母と子ども。その二人が閉じ込められていた部屋から脱出して感動の終わり……かと思いきや、その後のことまで描かれていて驚きました。ただの脱出劇ではなく、母子が癒されるまでをも盛り込んだストーリーでとても心に響きました。

部屋を出れてほっとしている母と、わけのわからない世界に出て困惑している子どもがすれ違うさまが丁寧に描写され、どちらの気持ちにも感情移入できます。けれどほっとしたのもつかの間で、いつしか母の方が「何で私はあんな目に遭っていたのだろう」と気を病んでしまい、助かっただけでは済ませられない葛藤に私の方まで胸が痛くなりました。しかし一人の人間でもあり母でもある彼女を見ていると、自分の不幸を嘆くだけではなく、ちゃんと子どものことを考えてあげてほしいとの思いが沸き上がってきます。なぜなら母が嘆いている一方で、ジャックは母以外の本物の人と触れ合い、人のあたたかさを通して段々と普通の子どもになっていたからです。二人のすれ違いがなくなったとき、ずっと二人で暮らしてきたからこそ生まれた母と子の絆に嫉妬してしまいました。

特に、これから子どもを持つかもしれない女性や、お子さんを持っているお母さんお父さんにぜひ見ていただきたいなという映画でした。

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9

壁の外を知らずに過ごした少年と、7年以上も監禁されていた母親の新しい生活。

2016年公開時に映画館で見逃してしまい、ずっと気になっていたがついに先日鑑賞した。
オーストリアで実際に起こったフリッツル事件(オーストリアに住む男性が24年間実娘を監禁し出産させていた)がモデルだと聞き、陰鬱な映画を想像していたが、本作はどちらかというとハートフルな映画。息子のジャックが成長していく過程に心が温まる。
前半の監禁部屋からの脱出劇は息を潜めてしまうほどの緊迫感があるが、後半に描かれる親子の新しい生活は、不器用ながらも支え合う二人の愛が感じられる。
5年間以上小さな部屋に母と二人暮らしだったジャックにとって、壁の外は宇宙空間に等しかった。その彼が初めて触れ合う「他人」と関係を築き、母親の知らぬ間に新しい環境に適応していく姿は子供の秘める強さを私たちに伝えてくれる。
映画の終盤で、二人がかつて閉じ込められていた小屋を訪れるシーンが特に印象的であった。過去を断ち切れずにいる母親とは対照的に、小屋の中にある家具の一つ一つに「Good bye」と声をかける息子のジャック。小さな子供なりに過去を清算し、前を向いて進もうとしている姿が感動的だった。
いつも何気なく過ごしている生活を振り返ってその尊さに気づかされる映画だと思う。