歩いても 歩いても / Still Walking

歩いても 歩いても / Still Walking

兄の命日に久々に実家に集まった横山家。しかし次男の良多は父と折り合いが悪く、気が重い。食卓には母の作った手料理が並び、思い出話に花が咲く。そんな何気ない会話の中に、家族それぞれが抱えた事情が見え隠れする。どこにでもある家族の夏の一日を静かに繊細に描いた、是枝裕和監督の思いが詰まったホームドラマ。

歩いても 歩いても / Still Walkingのレビュー・評価・感想

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歩いても 歩いても / Still Walking
7

家族は面倒だけど嫌いになれない

「隣の芝は青く見える」。子育てに苦労したり、「家族」という枠の中で悩んでいる人に観て欲しい作品。
一般人の人生は面白いオチもなく、そのほとんどが絵にならないし、言葉にできるものでもない。一生懸命話しても「ふーん。そんなことで悩んでるの?」で終わらされることばかりだ。でも、私達はその中で必死に生きていて、重大な決断をしたり、一生ものの傷を負ったり言葉を交わしている。こんなに心を揺さぶられているのに、表現する術を持っていなくて、モヤモヤした感情だけが溜まっていく。そんな想いを上手く表現して、ストレスを発散させてくれたのが、この作品『歩いても 歩いても』だ。
何気ない家族の言葉に、恨みや孤独、狂気まではらんでいたりする。特に印象的なのは、迷いこんできた蝶々を、樹木希林さん演じるお母さんが追いかけるシーン。家族の日常会話の中で、スッと出てくるシーンなので、余計に心に響くものがあった。幼い頃は桜や神社に興味を持てなかったのに、年を重ねるにつれて、その美しさに胸を打たれるような感覚に似ている。
人は死んだら終わりだから、一歩遅かったということがないように、必死に生きていきたいと思う。
配役、音楽も合っていて良かった。