あひるの空

あひるの空のレビュー・評価・感想

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あひるの空
9

成長と努力の軌跡、そして挫折の物語

週間少年マガジンで連載中のバスケ漫画・あひるの空。
学校の不良と共に仲間を増やし努力を積み重ねる、王道青春スポーツ漫画。

主人公・車谷空は高校進学を機に、母の入院する病院のある神奈川県川崎市の高校へと進学する。インターハイに出場したら会いに行くと母へ宣言するが、部は校内で悪名高い双子によって不良のたまり場となっていた。平均よりも身長の低い空は不良たちに「おまえには無理だ」と馬鹿にされる。それでもバスケットボールをした空は「バスケで勝負しましょう」と持ち掛け、5対1の勝負を制す。悪名高い双子の弟・花園百春は空のシューターとしてのセンスと類まれなる努力を前に魅了され、バスケットボールの経験を思い出し、空と二人で部活を始める。

不良やスポーツのセンス、努力というよくある設定の王道漫画だが、あひるの空は決して努力が報われ夢が叶う物語ではない。青春の中にある努力と成長、そして挫折を描いている。
仲間を集めて順調に力を身に付けある程度の試合ができるようなった空たちだったが、たった一回の敗北から煙草を吸おうとした百春たちのせいで部室が燃え、部は廃部となってしまう。それを同じくして、インターハイに行ったら会いに行くという空と母親との約束は、負けたその日に母親の病死という形で破れてしまう。
努力を重ねた先にある勝利や栄功を「あひるの空」は簡単には描かない。現実と物語としての絶妙なアンバランスで物語は展開される。
シューターとしての母親譲りのセンスを持つ空には、バスケットボール選手として重要な「身長」という最大の武器を持たない。空の唯一の羽であるシューターとしてのセンスも試合ではもがれる。

物語の中は空だけではなく、部員や教師たち、他校の生徒の成長と進歩が描かれている。それぞれが抱える苦悩を一つの試合ごとテーマとなり、苦悩する原因や逃げる過去へと立ち向かうきっかけとなる。
あひるの空には多くの登場人物の苦悩や成長、そして未来を描くが、全てが伏線として回収されることはない。読者に対して未来を想像させる。
また雑誌掲載と単行本で読み方が変わる。漫画は1話の終わりは多くが引きで終わる。特にスポーツ漫画にそういう構成が多い。あひるの空も例外ではないが、単行本ではそれらが極端に少ない。1話ごとの扉絵も極端に少なく、試合の流れをノンストップで読むことができる。
王道漫画にありがちな努力と成長だけではなく、努力の先にある挫折をテーマにした物語。
少年達は挫折のために未来へと歩いて行く。

あひるの空
9

バスケ好きにはたまらないマンガです。

このマンガは、身長150㎝の主人公が、廃部に近い状態だった高校に入学し、そこでいろんな先輩や仲間に出会い、バスケットボール部を復活させてインターハイ優勝を目指すというストーリーです。バスケットはルールが毎年変わるなど複雑だったりするので、なかなかマンガにするのは難しいのですが、このマンガはルールを忠実に再現されていて、経験者の方であればとてもリアルでおもしろいと思います。身長が低くいから諦めるのではなく、低くても戦えると教えてくれたり、チームで戦うとはどういうことなのかを教えてくれます。
このマンガで面白いのはストーリーが単純なサクセスストーリーではないところです。試合にすべて勝利するだけではなく、完敗やワンゴールの差で負けたりと、現実の試合でありそうな展開を描いているので見れば見るほどマンガの世界に引き込まれます。さらにバスケットのマンガではあるのですが、高校生の設定なので、普段の高校生活のシーンも描かれていて何気ない会話のシーンもどこか懐かしく思えて好きです。部活の顧問と主人公が親子なので、そこでの会話のやりとりも見ていただきたいです。バスケットに高校生活に親子の関係に見れば見るほど次の展開が気になってしまうマンガだと思います。

あひるの空
8

今までになかったスポーツ漫画

あひるの空とは高校バスケットボールを題材にした漫画です。アニメ化されるほどの人気漫画です。
なにが「今までになかった」かというと、主人公が所属する九頭龍高校バスケットボール部はびっくりするほど負けます。大事な試合、練習試合、などなど初期の方はほとんど勝ちません。
スポーツ漫画というと、下手だったチームが過酷な練習を経て強豪をなぎ倒す!というのが一般的ではないでしょうか。あひるの空の作者、日向武史は「リアル」を追求しています。作者コメントでも読者の傷をえぐりたいと言っています。勝ち負けでなく、リアルな葛藤を描いている部分こそあひるの空の醍醐味と言えます。
さらに、スポーツ漫画ではありえないこともしています。
それは、結果を先に描いてしまうことです。つまり、勝敗がわかっている試合を読むことになります。なにがおもしろいの?と思う方もいるかもしれませんが、作者曰く、そこまでの過程を見て欲しい。本当に大事な部分はそこなんだ、と。
明らかに他のスポーツ漫画では味わえない感覚、しかし部活動やなんらかのスポーツをやっていた人ならば、あの時の感覚が蘇るような、そんな漫画です。
あひるの空の中で一番好きなセリフがあります。
必死に努力して強豪に挑むバスケ部を見てサッカー部が「一年からちゃんと練習していたらバスケ部のように強豪と戦えたのかな。」とつぶやきます。そして顧問の先生が「わからんが、その後悔は一生消えんぞ。」と放ちます。
作者の思惑通り、見事に自分の傷がえぐられました。

あひるの空
9

特に学生にオススメ

お試しでも良いので、まず1巻だけでも読んでみて下さい。
高校バスケを舞台にしたマンガで、主人公の車谷 空(くるまたに そら)は九頭龍(くずりゅう)高校に入学します。ところがこの九頭龍高校、とんでもないヤンキー高校で喧嘩等のトラブルは日常茶飯事。特にバスケ部は問題児の集まりで、そんな中で部活をすることは絶望的な状況。
主人公の両親は二人とも元バスケットボールプレイヤーで、幼少の時から特に母親からバスケを教わっていました。そんな中、母親が病気の為にバスケが出来なくなり、主人公の元から遠く離れて入院生活を送ることになります。そこで母親と交わした約束が「高校バスケで全国優勝した時は会いに行く」というもの。そんな純粋な想いを胸にバスケをしようとするが、それを良く思わないヤンキーの先輩方。最初は嫌がらせ等で邪魔ばかりしてきますが、主人公のひたむきな姿勢に感化されて共に部活をする仲間になっていきます。
その仲間は当然として、周りのライバル達や顧問などのキャラも一人一人が濃く、味のある人物で感情移入する場面が多々あります。また、心に刺さる言葉も多く、現役のバスケ部は共感出来ること間違いなし。
バスケのルールも所々で説明があるので、バスケ未経験でも話はわかると思います。舞台が高校なので、そこに近しい年代の方には是非とも読んでみて欲しいです。