銀の匙 Silver Spoon

『銀の匙 Silver Spoon』とは、2011年19号から2019年52号まで『週刊少年サンデー』(小学館)で連載された、荒川弘による少年漫画である。作者の事情により、2014年から不定期連載となった。
本作は主な読者層である将来に悩む中高生をターゲットに、編集者が農業高校漫画を提案し制作された。作者自身が農業高校出身であったことから、舞台の大蝦夷高校(おおえぞこうこう)は母校の帯広農業高校をモデルにした。物語は都会育ちの八軒勇吾(はちけんゆうご)が、仲間や家畜たちと触れ合い成長していく姿がのんびりと描かれている。
コミックスは全15巻が刊行され、2020年2月時点で累計発行部数は1,700万部を突破した。2012年には「マンガ大賞」の大賞、「第3回ブクログ大賞」のマンガ部門で大賞、「第58回小学館漫画賞」の少年向け部門を受賞した。さらに2013年には農林水産省主催の「コンテンツ・アワード・オブ・ジャパン・フード・カルチャー2013」で大賞を受賞。テレビアニメは2013年7月から9月まで放送された。実写映画は2014年3月7日に公開され、八軒勇吾役を中島健人、御影アキ(みかげあき)役を広瀬アリスが演じた。

銀の匙 Silver Spoonのレビュー・評価・感想

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銀の匙 Silver Spoon
10

『銀の匙』の魅力

皆さんは、「銀の匙」と聞いただけではただのスプーンを思い浮かべると思います。しかし、この「銀の匙」には「幸福を招く」という意味があるのです。

この漫画の主人公である八軒勇吾は父親から進学校への入学を強く命じられ、日々の勉強に嫌気がさし父親の反対を押し切って、農業高校へと入学します。
そこでは、勉強漬けの日々からは全く考えられないような農業を学ぶ生活が始まったのです。早朝からの家畜の世話や春夏秋冬の野菜の栽培、農業高校ならではの文化祭などのイベントの数々。そんな、日々を過ごす八軒勇吾の高校卒業までの3年間を描いた、八軒勇吾とその仲間たちによる日常の物語です。
この作品はあの『鋼の錬金術師』の作者・荒川弘さんなんです。これだけでも、読んでみようかなと心をくすぐられる人は多いと思います。

『銀の匙』の魅力はやはり、仲間たちと農業高校での生活を通して、描かれる主人公の成長です。
登場する主人公の仲間たちは実家の農家を継ぐ、獣医になりたいなど、自分の目標がしっかりと決まって入学してくる仲間がほとんどでした。
しかし主人公は親の言いなりになりたくないという理由で入学したため、自分の進路がはっきりしている周囲に劣等感や嫉妬を抱いています。そんな主人公が飼育している動物との触れ合いや先生、仲間たちと文化祭などの学校行事を通して成長を重ね、自分のやりたいことを見つけていく姿が、「THE青春」という感じで読んでいてとてもわくわくします。
また思春期ならではの葛藤や思いの表現がとても繊細に表現されていて、読んでいる読者が高校生に戻ったような感覚になる作品です。
高校生のときの青春をもう一度味わいたい方にとてもおすすめできる作品です。

銀の匙 Silver Spoon
9

心が温かくなるマンガ

主人公が普通の中学校から農業高校に入学するところから、物語が始まる。
普通の学校との違いに驚き、周りの友達が個性豊かで、ダメなところがあるが自信を持てるところもある。皆が助け合い高校生活を送るのである。
子豚を成長させて出荷するのだが、子豚に名前を付け可愛がってあげて出荷して戻ったときに、ソーセージやベーコンを作る姿に「最後まで責任をとる」という主人公の成長を感じた。
それを友達や先生に振る舞うのだが、主人公の、姿を見守ってきた友達も少し成長していたように感じ、心が温かくなるシーンである。
蝦夷農祭で自分達が育てたジャガイモを売るのだが、形が悪かったり小さかったりするのを、ダメだとレッテルを付けずに違う形で勝負させる時に、主人公が落ち込んでる時と重ね合わせる描写があった。そこで勇気をもらえて元気になったのも、良いシーンだった。

農業高校を選んだ理由もすぐにわかるが、それに悩んでいたときにかけられた校長先生からの一言も心に響く。
父親との確執も主人公の勇気のお陰で少しづつ緩和される。父親はやはり偉大でぶれないのも格好いい。
北海道が舞台で、主人公が美味しそうに飲み食いするリアクションも毎回楽しめる。
最終話に近付くにつれて話の展開が早過ぎるのが残念な点だが、面白いのは間違いない。

銀の匙 Silver Spoon
10

農業とは、命とは何か

都会での勉強漬けの生活から、その勉強の意義すら見失った主人公が、未知の世界である農業高校へと進学。
寮生活による人間関係の構築、実習をこなしていく上で学んだ机上では得られない経験と知識、部活動を通して責任感を身に着ける。
勉強以外に取り柄がないと思っていた主人公は、これまで周りにいなかった人間たちからの影響を受け、次第に目標を持ち人間として成長していく。

『鋼の錬金術師』等で有名な、荒川弘が描いた農業学園マンガ。この作品は前述の作品のような、主人公が(勉強以外)のかっこいいところがほとんどない。つまり、主人公に憧れるといった要素はほぼない。
だがその分、「やりたいことがない」「将来が決まらない」などの、思春期の高校生の等身大の姿が描かれている。

実家が農家である作者が通っていた農業高校を舞台とした作品のため、一般的に知られていない農業の知識や農業高校の実態がわかりやすい。また農家が直面している後継者不足、借金問題、偽装などの信頼性の問題などが、コミカルにときにシリアスに表現されている。
そして食事をとるとは命をいただくということ。特に肉を食べることに関しては、生き物を殺しているという事実から目を背けない、信念のようなものを作品からは感じられる。

銀の匙 Silver Spoon
8

お腹が空くアニメ!

「銀の匙 Silver Spoon」は、新鮮な設定とキャラクター、バラエティ豊かなストーリーで、魅力的な漫画・アニメ作品です。
物語は、都会育ちの主人公が農業高校に入学し、農業の世界と向き合う姿を中心に展開します。このアニメの魅力の一つは、その独自の背景設定です。都会の喧騒から離れ、農業の道を選んだ主人公たちが、畑仕事や家畜の世話に奮闘する様子がリアルに描かれています。普段は見ることない触れることの少ない農業の世界に触れ、新たな視点からの物語が楽しめます。

キャラクターたちも個性的で魅力的です。初めての経験や挫折に直面しながらも、友情や学びを経て、自身の進むべき道を見つけていく姿が感動的で心を打たれます。また、農業高校の仲間たちも、それぞれの背景や目標を持ち、共に成長していく様子が描かれています。彼らの絆や友情が物語を豊かにしています。

「銀の匙 Silver Spoon」は、ドラマとユーモアのバランスが絶妙です。農業の厳しさや挑戦に対するリアルな描写がありながらも、キャラクターたちのコミカルなやりとりや笑えるシーンも満載のため、笑いと感動を共に味わうことができます。

総合的に言えば、「銀の匙 Silver Spoon」は青春、友情、成長のテーマを掘り下げ、新鮮で魅力的なアニメ作品です。農業の世界に興味がある方や、リアルな人間ドラマを楽しむ方に特におすすめの作品です。豊かなストーリーとキャラクターたちの魅力に引き込まれ、心温まる物語を楽しむことができるでしょう。

銀の匙 Silver Spoon
7

八軒勇吾の成長ぶりがすごい

夢も希望も持たない主人公・八軒勇吾が流されるままに農業高校に進学し、そこで様々な人との関わりや経験を積んでいき、最終的には学生起業家となる一人の少年の成長を描いた作品です。
八軒は農業高校での馬術部への入部、手作りピザへの挑戦、授業で飼育していた豚を使用した加工食品作り、また、今まで行ったことのないバイトなどを経験していきます。
その経験を通して、これまで他人との関わりを積極的に持ったり、自分から興味を持って何かに取り組んだりしたことのない八軒の成長ぶりがまた凄いのです。
手作りピザの話では、成功に至るまでの八軒の努力は凄まじいものです。最初は面倒なことだと感じながらも、石窯作りからピザの作成までの過程を一から自分で調べつくし、同級生や先輩の力を借りながら成功させ、充実感を得ることができています。そのような結果を得て八軒は以降様々な経験を積みながら学生起業家になるという夢を持ち、最終的にそれを実現させます。
その中での八軒の葛藤や心の変化について、また経験の過程やそれが実際にどのような手段を取るのか、計画がどのように進行するのかが非常に詳細に描かれており、それを通じて一人の少年がここまで成長できるのかという点が分かりやすく読み進められます。
また、もう一つの読みどころは、ヒロインである御影アキとの関係性です。最初はお互いにただの同級生という関係ですが、アキと親しんでいくうちに恋愛感情が生まれ、恋人にまで発展します。ここまでの過程もなかなかスムーズにはいかないのですが、そこが次はどんな展開になるのかが気になり、じっくり二人の関係性を見ていく楽しみがあります。
絵柄については、人物はすごくシンプルに、背景などは細かく描かれています。それでいて「ごちゃごちゃしていて読みづらい」という印象がないので、読んでいて疲れることはありません。
絵柄も内容も十分満足できる作品ですが、最初の方の本編の細かさに比べ、八軒の学年が上がるにつれて話の展開が早すぎるところが少し残念でしたので、評価は7というところです。

銀の匙 Silver Spoon
10

銀の匙ってどんな漫画?大自然の中で生まれる笑いあり、涙ありの農業ストーリー

銀の匙の魅力その1
農業高校に振り回される主人公

銀の匙の舞台は、北海道大蝦夷農業高校です。主人公は八軒勇吾。
八軒勇吾はもともとは札幌の進学校にかよう優等生でした。ですが、進学校の激しい学力競争に負けてしまい、初めは将来の希望も夢も持ち合わせていない暗い性格でした。
しかし、進学校の担任の先生に勧められて入学した大蝦夷農業高校での生活で暗い性格が変わっていきます。
北海道の広大な土地によるスケールの大きさに圧倒されながら慌ただしい毎日を送っていきます。
朝5時起きの実習活動や馬術部での大会の経験を通して、入学当初は、何も知らなかった八軒勇吾が命の重みや食への感謝する気持ちの変化がわかりやすく、様々な学びがあります。

個性あふれる登場人物たち

八軒勇吾
主人公である八軒勇吾は、何か頼まれたら断れない性格で、周りからは「人にかまって損をするタイプといわれています。
持ち前の性格から、様々な厄介ごとに巻き込まれていきます。しかし、そのおかげか暗い性格からアクティブな性格へと変わっていきました。

御影アキ
御影アキは銀の匙のヒロイン的な存在で、馬が大好きな女の子。
馬関係の仕事に就きたいけど、家の牧場の後継者としての期待から言い出せずにいた、、、

などなどいろいろな登場人物とのストーリーで
読んでいて飽きがこない漫画です。ぜひ読んでみてください。

銀の匙 Silver Spoon
9

農業高校生のリアルな学生生活満載

セクシーゾーンの中島健人くん主演で映画化もされた、マンガ「銀の匙」。北海道の農業高校を舞台とした学園マンガ。

原作者は、「鋼の錬金術師」でおなじみの 荒川弘先生。
荒川先生自身も、北海道の酪農家の生まれで農業高校出身ですから、その学園生活はリアルそのもの。
高校受験に失敗した札幌出身の主人公「八軒くん」が、寮のある大蝦夷農業高校(通称:エゾノー)に進学するところから始まるのですが、馬を愛するヒロインアキちゃんや甲子園を目指す駒場くん、血が苦手なのに獣医師を目指す相川くん、大規模経営農場の娘タマコなど、エゾノーで出会う個性豊な仲間や先生たちと、進学校では味わえないさまざまな体験を通じて成長していくストーリーです。

原作者自身が、酪農家出身で農業高校の卒業生ですから、授業の実習内容や、部活動や文化祭などの学園生活の内容がまさにリアル。

豚者でかわいがっていた豚が、肉になって帰ってきたりという経験を経て命の大切さを学びながらも、その手でベーコンにしてしまう。

ベーコンだけじゃない、農業高校で生産された数々の食材をチーズやヨーグルトにしたり、石釜でピザ作ったりと、よだれが出てくる内容も盛りだくさん。

この作品は、マンガ大賞2012で大賞を受賞した作品で、何度読み返してもおもしろいです。

銀の匙 Silver Spoon
8

農業高校生が起業する

北海道の農業高校に進学した主人公。受験戦争に敗れたことから、家を出たいとの思いで下宿のある高校へ。夢も希望もない所から始まる。入学すると今まで経験したことのないような生活が待っていた。農業高校でしか体験できない、「実習」という労働を経験していく中で動物(経済動物)の命を学んでいく。生活に慣れていく中で、現代の農業社会が抱える問題なども描かれていく。部活強制の高校であるため、ヒロインの伝手で馬術部へ。始めの頃はいやいや行っていくが、動物とのふれあいの中で過去の自分を見つめなおしていく。物語が後期になっていくにつれて父親との亀裂の話が出てくる。何が何でも東大に行けという父親。そこから逃げるように家をでた主人公。逃げた先で何ができるかを証明していく。主人公が三年になるころ先輩と企業しようと考える。三年間で行う実習の中で、ブタをベーコンにした経験があることから、ブタをメインに企業していくことになる。友人が家庭問題で退学したり、本当の夢を話せないヒロインなど、ここまでくるのに様々な経験をし、努力したものが報われるをテーマに会社を作り始めた。高校生が起業するというのは難しいことかもしれないが、これからの日本に必要なことが描かれている。

銀の匙 Silver Spoon
10

読んだら絶対に『食べる』ということを考える!

通常、農業高校を舞台にした一般家庭育ちの主人公は、農業や酪農に夢を持って入学することがセオリーではないでしょうか。しかし、主人公である八軒は、進学校出身であり入学した切っ掛けは担任の勧めであり、威圧的な父親から逃れる為に寮のある学校を選んだに過ぎなかったのです。
最初は、農業や酪農の家出身であるクラスメイトやルームメイトに引け目を感じたり、常識の差に驚いたりします。また、皆一様に『夢』があることにも驚愕し劣等感を持ちます。
物語が進むにつれ、一般家庭出身だからこそ気が付く点にクラスメイト達も感化され意見を出し合える環境になっていきます。特に印象的な物語が、『豚を育てて出荷する』というものです。
八軒はあえて、豚に名前をつけ向き合うことを選択します。実家が酪農の人には、理解しがたく改めて考える切っ掛けを与えます。生き物を食べるということは、どういうことなのか一人ひとりが考えさせられます。
食べるということ、育てるということという問題提起は勿論。学生ならではの勉強、恋愛、部活、進路、それぞれの家の事情などの悩みなども一つ一つ丁寧に向き合い答えを出そうと奮闘する姿に胸があつくなります。そして『逃げる』という選択は、必ずしも間違いや、いけないことでなのだろうかという校長の問題提起。いくつもの訴えや問題点に心を動かされる作品です。