蒼穹のファフナーシリーズ / Fafner in the Azure series

蒼穹のファフナーシリーズ / Fafner in the Azure seriesのレビュー・評価・感想

レビューを書く
蒼穹のファフナーシリーズ / Fafner in the Azure series
10

限りなく澄み渡った空

作品としての始まりは2004年からだった。
当時の人気ロボットアニメとしては「エヴァンゲリオン」や「ガンダムSEED」が主流であったのに対し、「機動戦艦ナデシコ」を手掛けた制作会社XEBECが新たに世に送り出した作品の一つだ。

キャラクターデザインが「ガンダムSEED」の平井久司氏だったのもあり、ガンダムSEEDとのすみわけが少し難しい部分もあり、深夜アニメという時間帯や序盤の用語・キャラクター説明に多くの時間を費やし、放送開始から視聴者は徐々にふるい落とされていった。

物語の概要が宇宙から飛来したケイ素生命体フェストゥム(細かく書くと驚くほど長い説明が必要になるため、ここでは割愛させていただく)を地球の総力を挙げて戦うという内容だが、日本の平和な文化を継承をしてほしいと願う人たちが集う竜宮島がメインとなり、物語は展開していく。

ロボットアニメの代名詞である、子供が不意の事故から戦うといった部分も通りつつ、「なぜ戦うのが子供たちでないといけないのか」や「戦いの中で散った仲間がどうなっていくのか」、「なぜ平和な島が戦いに巻き込まれていくのか」が主人公である真壁一騎の視点で描かれている。

そうして物語が区切りを迎え、散っていった仲間に思いを馳せてファンは涙ながらに終わりを温かく迎えた。

しかしその翌年の末に特番として「蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT」を放送し、さらにその5年後に完全オリジナルで映画を放映。
そしてそのさらに5年後、テレビシリーズとしては11年ぶりという長い年月をかけて第2期を2クールに渡って放送した。
前作よりも展開がエグく、重要人物が割と序盤で退場するなど、原作者である冲方 丁は大暴れである。
その中で見た内容を筆者はいまだに鮮明に覚えている。(なぜならBlu-rayBOXを買い、定期的に観かえしているから)

その後もOVAの先行上映として映画館で第1回と第2回を除き、1年に三話ずつを上映。
途中XEBECが倒産し、productionI・Gに製作が変更するなどのアクシデントがあったが、無事物語の終わりまで走りきることができた。

そうしていま現在も「蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE」として比較的平和な物語の幕間をつづけてくれている。

この記事を読んで興味を持ってくれた方は、是非ともこの「蒼穹のファフナー」を応援してほしい!!

蒼穹のファフナーシリーズ / Fafner in the Azure series
9

蒼穹のファフナーという大人が有能なエヴァンゲリオン

エヴァンゲリオンがついにシン・エヴァンゲリオンを以って完結しましたね。
エヴァンゲリオンは本当にいろいろな人たちに影響を与えて、アニメ史はエヴァ以降、エヴァ以前で時代を区切ることすら可能になりました。
それだけ大きな作品でしたが、今回はエヴァに影響を受けた作品の一つである「蒼穹のファフナー」を紹介していきたいと思います。

蒼穹のファフナーもエヴァンゲリオンと同じく、少年少女がロボットに乗って戦う、という所謂ロボットものに該当しますがこの二つの決定的な違いは敵の魅力と言えるでしょう。
勿論、エヴァンゲリオンの敵である使徒も魅力がある敵ですが、蒼穹のファフナーの敵である、フェストゥムと呼ばれる生き物もとても美しく、魅力的な存在です。
フェストゥムは金に輝く化け物みたいな感じで、人を理解するためにその存在を自分たちに取り込んできますが、人類からしたらはた迷惑な話ですよね。
取り込まれるということは死を意味しますから。なのでそれらと戦うというのが話の本筋となってきます。

そのほかにも蒼穹のファフナーは大人たちが本当にいいキャラしていて、魅力にあふれています。
エヴァンゲリオンの大人たちは頼りなかったり、話を聞いてくれなかったり、説明不足だったり、子供たちが戦うことをよしとしています。エヴァはこういうところも面白いのですが、ちょっと辛辣で不安になりますよね。
でも蒼穹のファフナーの大人たちは主人公たち少年少女が戦うことを本気で嫌っていて、戦わなくても済むように暗躍してくれたりするその優しさを感じることができる非常に温かい物語となっています。

人のやさしさに触れたいときに、見てみたくなる。蒼穹のファフナーはそんな作品です。

蒼穹のファフナーシリーズ / Fafner in the Azure series
10

大河ドラマのように歴史のあるシリーズ

10年以上の年月かけて完結したまさに大河ドラマのようなシリーズ。ロボット物としての戦闘シーンや
メカニックなども勿論素晴らしいが、なんといっても人間ドラマが魅力的な物語。戦う理由、守りたいものなどそれぞれの思いがしっかりと描かれており、誰しも感情移入してしまう登場人物がいるのではないだろうか。特にパイロットである主人公たちだけにスポットが当たるのではなく、親などの周りの大人たちにもしっかりと作り込まれたストーリーがあるのが大きな魅力である。
シリーズが進むにつれ作中の月日も流れ、子供であった主人公たちも大人に成長し、過酷な経験を得てそれぞれが進む道を見つけていく。その中で考え方や目指す未来も形を変えていき、その過程を見守るのも感慨深い。
多くの登場人物が過酷な戦いの中で命を落としていくが、ただいなくなるのではなく、何かを残された人達に残して受け継がれていくのはシリーズ一貫して描かれているテーマではないだろうか。重いストーリーではあるがそこには悲しいだけでない救いがある。
かなりの大作なので気軽に見始めにくい点はあるかもしれないが、物語をすべて見終わったときの感動は十分に見る価値があるものであるといえる。

蒼穹のファフナーシリーズ / Fafner in the Azure series
10

犠牲あっての幸せ

他のロボットアニメや戦闘アニメであれば主人公側が勝ってハッピーエンドというのが多いことに対して、この作品は主人公の親や仲間が次々と戦死していく。終盤まで生き残った仲間も結局命を落としてしますというのはもうこのアニメでは当たり前のこと。なので主人公だから必ず勝つ、死なない、生きて帰ってくる、ヒロインと幸せになるといった王道シナリオが裏切られてもまったく不思議ではない。そのため見ていて主人公や仲間が勝つことが出来るのか、生き残ることが出来るのかというドキドキ、ハラハラを毎回の話で味わうことが出来る。いつ主人公側から犠牲が出てもおかしくないという世界観はこれまであった「結局は主人公側が勝つんでしょ」というあらゆる作品に当てはまる常識、思い込みを根本から覆してくれる、そしてだからこそ自分たちの勝利や幸せな生活は仲間が闘い、そして犠牲になったことで得られた物なのだと実感することが出来るのである。登場人物Aといった一般人の死ではなく重要人物が次々と命を落としていくストーリーに命の儚さや残酷さ、しかしその世界で生きていこうとする必死さが他の作品とは比べ物にならならいレベルで伝わってくるのである。こう考えてみて欲しい、私たちの平和な生活の背景には戦争があり、我々が平和に生きていられるのは戦争で何人もの人が戦ってくれたことで実現していると。命の儚さを感じることが出来る最高の作品である。