ピンポン / Ping Pong

ピンポン / Ping Pongのレビュー・評価・感想

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ピンポン / Ping Pong
10

スマイルが笑うまで。

松本大洋の漫画を初めて読んだのはこの作品でした。とにかくインパクトは強烈でした。白黒でまるで版画のような濃いタッチ。このベタ塗りはヤバいと思いました。
要はスマイル(月本)の中での永遠のヒーローであるペコ(星野)の完全復活までを描いた物語であると言えます。スマイルはペコに憧れて卓球を始めました。そして、練習を全くせずにお菓子ばかりを食べているペコを実力でいつのまにか抜いてしまいます。スマイルにしてみれば心境は非常に複雑だと思います。それでもスマイルの記憶の中にあるヒーロー(救世主)はペコに違いありません。決して笑うことなくスマイルはペコの再来を待ち続けます。ペコは才能だけで勝ち続けてきたタイプの人間でした。いわゆる、天才。それとは対照的にスマイルは愚直なほどに同じ基本練習を繰り返す秀才。真面目だという言葉だけではもはや言い表せないレベル。スマイルの中ではある種の葛藤が起こります。自分はペコを越えてしまった。絶対に認めたくない現実。絶望したスマイルを触発するのはあくまで自分よりも強い存在だけでした。チャイナもアクマもスマイルには歯が立たない。早く負けたいのに勝ってしまう。そんな矛盾を感じながらスマイルは自分よりも強い存在の登場を望んでいました。最強の敵であるドラゴンを倒してペコがスマイルの前にヒーローとして帰ってくる。そして、最強のスマイルを絶対ヒーローであるペコが倒して物語は完結する。スマイルに笑顔が戻る。

ピンポン / Ping Pong
9

それぞれの向き合い方を描いたお話

登場人物4人の卓球への向き合い方を描いた作品。
スポーツ漫画でありながら自分の才能とその壁への向き合い方について、スポーツをやったことのない人でも共感できるストーリーになっています。

卓球の才能という面でまったく異なる登場人物4人が出てきます。最終的には物語の主人公であるペコが勝つ姿が描かれていますが、自分の才能と真正面から向き合っているドラゴンや周囲の才能に劣等感を感じながらも卓球から離れられないアクマ、自らの才能に気づきながらもそれを隠してきたスマイル、それぞれの良さがあり、読んだ方にはきっと登場人物4人の内のどれかに共感を覚えると思います。
最後はペコが勝つ姿が描かれているので何事も楽しむことが一番と思いますが、才能との向き合い方に正解はないと読んでいて感じました。

いわゆるスポコン漫画とは違い、特殊な能力が登場するわけではないので一度読んで衝撃を受けるような作品ではないかもしれません。ですが物語の中で人間味が色濃く描かれており、2回目3回目読むうちに気づいてくるものも多くありました。
仕事やスポーツ、普段生活している中でも劣等感や物事への向き合い方に悩むことは誰でもあると思います。そんな誰でも悩み得ることにヒントをくれるそんなスルメ作品だと思います。