かくかくしかじか / Kakukaku Shikajika

かくかくしかじか / Kakukaku Shikajika

『かくかくしかじか』とは、『Cocohana』にて2012年~2015年に連載された東村アキコによる自伝漫画である。幼い頃から漫画家を夢見るお調子者で夢想的な少女・アキコは、美大受験に備えて通い始めた絵画教室で一風変わった講師・日高と出会う。絵画一筋の情熱を貫き独特の人生観を持つ彼に様々な影響を受けながら、アキコが高校生活、大学受験、OL時代を経て漫画家としての人生に至るまでが描かれている。

かくかくしかじか / Kakukaku Shikajikaのレビュー・評価・感想

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かくかくしかじか / Kakukaku Shikajika
9

東村アキコの半生

『東京タラレバ娘』や『海月姫』で有名な東村アキコ先生の、学生時代から漫画を書き始めた頃の実話を漫画にした作品です。
実は私は上記作品の名前は聞いたことはあっても読んだことはありません。たまたま薦められ、それも5巻完結とお手頃だったので軽い気持ちで読んでみました。すると、まんまと東村ワールドに引き込まれてしまい、5巻休むことなく読みあげてしまいました。他の作品のことは分かりませんが、とにかくご自身のエッセイということもあってか、お話しはひじょうにコミカルに描かれていて、途中何度もクスクス、いやゲラゲラ笑いながら、しかし所々でなんとも言えない切なさを挟んでこられ、私はその虜になってしまいました。誰もが通る花の高校・大学生活。きっとこの頃が一番自由で、体力も変な自信も兼ね備えていて何でも出来て…でも一番肝腎なことからは目を背け、それに気付かないように、蓋をするように過ごす日々。モヤモヤしてるのに、それを忘れるように遊び倒す東村先生と過去の自分がとてもリンクしました。
このお話しを書くのはきっと先生にとって、触れたくない自分の引き出しを開ける作業だったことと思います。でも向き合うことで先に進めるんですよね。私も封印してた思い出を一緒に開封できた気持ちになりました。

かくかくしかじか / Kakukaku Shikajika
8

号泣してしまいました。

東村アキコさんの反省をつづったエッセイです。彼女が通っていた絵の予備校の先生があまりに強烈で、ついつい読み進めてしまいました。私も怠け癖があるし、なかなかうまくできないので、そういうところを包み隠さず描く作者はすごいなと思います。大学に入学して、漫画家になってからも交流があり、パワフルで怖い人だけど、生徒に好かれるいい先生だったんだなと思いました。先生が癌になったときは、とても悲しかったです。それでもあっさりとしている彼女を見て、「ああ、とても彼女らしい」と思いました。その後、先生のお葬式で、意外とみんなさっぱりしているのも、葬式のあと、こんなに集まれることも少ないからと飲み会をするのも、彼女のお人柄がなせる業だと思います。そして、ここで先生との思い出話がマジで泣けます。予備校時代、大学で行き詰っていると聞いた時は、生徒に描け描けと言っていた先生。病気で言葉がなかなかでなくても、やっぱりそのことを生徒に伝えてたんだと知り、号泣しました。また、葬式でではなく、その話を聞いた時に生徒たちが泣き出すという演出も涙を誘いました。

かくかくしかじか / Kakukaku Shikajika
8

東村アキコさんの自伝的マンガ

「かくかくしかじか」というマンガは、漫画家の東村アキコさんの高校生時代や大学生時代、大人になってからの漫画家生活などを描いたマンガです。主人公は東村さん自身になるのですが、作者が主人公でしかもそれをマンガにしてしまうところが面白いですし凄いところです。少女時代はマンガが大好きな少女だったようですが、好きすぎて買った漫画雑誌をベッドにして置いておく(雑誌を敷き詰めてそれを土台にして)ほどだったようです。割と話の前半部分はコミカルな感じで笑える内容も多いのでとても面白いですし、美大・芸大を目指したことのある人やそれに興味のある人などはさらに面白く読めると思います。東村さん自身が割と真面目すぎないユニークな人で、若気の至りというか失敗や困難をネタにしてしまうところがたくさんあって、こんな人もいるんだという意味でも稀な人だと思いました。後半は、割としんみりした内容もあったりで物語の奥行きが増すのですが、前半部分の明るくコミカルなだけではないところも相まって心にじんわりくるものがあります。大人になってから色々わかっていなかった子供の頃のことを思い出してしんみりする感じと少し似ていて、大人が読んでみる方が何か来るものを感じやすいのではないかと思われました。