グロテスク

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グロテスク
2

腋臭いじりのところ、必要だった?

この映画は、ホラー作品を多く手がけてきた白石晃司監督作品である。
社会人の小島くんと宮下さんは初デートの帰り道に何者かに襲われて、目を覚ますと汚い色の床と壁の拷問部屋で、手術着を着た男に監禁されていた。

「2人の愛で感動させてくれたら解放してあげる」「彼女(宮下)のために死ねる?」という言葉を引き金に、2人の愛情の度合いの見届けという名の拷問が始まった。切ったり刺したり突っ込まれたり、いろいろな拷問が登場。「よくこれ、被害者役の2人が出演のオファーを受けたなぁ」と思うほど、凄惨ないたぶりが続いた。

小島くんが男(最後まで名前が出なかった)に生殖器を使用不能にされても「宮下さんが代わりに痛めつけられるよりは」と耐える様を見て、男は突然「感動した!!」と叫び、急に2人を死なせない意思を見せ始めた。
拷問施設内の病室で、2人は医師である男の治療とリハビリを受けた。小島くんと宮下さんが解放された後に2人で支えあって生きていこうという甘い雰囲気と、男が警察への自首と億の財産を慰謝料として2人に譲渡すると反省の意を見せて、この映画はハッピーエンド。
そう思わせたところへ男が用意した白い粉薬にカメラが寄り、粉薬から暗転して、再び拷問部屋へと切り替わった。
「はいやっぱりねー!!粉薬はフラグだったんだー!」と、書き手は心の中で予想が的中して大はしゃぎした。

宮下さんの拘束を床に落ちているハサミで切るために、小島くんのあれを体から取り出して括り付けて、あれを自分で切ってから助けるよう、確実に小島くんが死ぬ無茶ぶりで感動させろと男は要求。痛みに耐えて倒れながらも、あと一歩というところで小島くんは息絶えてしまった。

感動できなかったから死が確定した宮下さんは、男に「あんた腋臭でしょ。体を売っていたあんたの母親の遺伝ゆえの腋臭であんたは今まで嫌われてきて、愛を知らないで大人になった。嗅覚に異常があるから気づいていないんだ」と、笑いながら男の今までの人生の予想を語り出した。
書き手は自分の学生時代が、腋臭が原因ではないけれども男と同じく同級生たちに好かれていなかった。ゆえに、人の寂しかった過去を予測だけでもつついてくるこの場面のせいで、この映画が全部台無しになった。心中が嫌悪で満ちた気分になった。

病室でいる場面で、男が自分の臭いに気づいていないと思わせる伏線のセリフはあった。だが腋臭いじりは本当に必要だったのか、もうちょっと男の過去を爽やかにチラ見せする描写にできなかったのかなと感じた。拷問映画に爽やかさを求めるのは違うかもしれないが、もったいないことをしたと思う。