輪典バベルハイムの商人

輪典バベルハイムの商人のレビュー・評価・感想

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輪典バベルハイムの商人
10

漫画の神・手塚治虫を彷彿とさせる美しい物語

一言で言えば悪魔と人間が運命金貨を通じて商取引する話なのですが、話の広げ方、終わらせ方が本当に美しいです。
ほとんど1−3話完結型。
中でもオススメなのは悪魔の黒田と人間の少女の交流を描いた話です。
少女は黒田と仲良くなりお兄様と慕うのですが、黒田は悪魔である自分があまり肩入れしてはならないと距離を置いていきます。それでも毎年のカードのやりとりは欠かしませんでした。少女はどんどん歳を重ね、やがて結婚し子供を産み育て、しわくちゃのおばあさんになって黒田と再会します。歳をとらない黒田に年老いた少女が当時と同じようにお兄様と呼びかけ、それに黒田は応えます。最後の場面で二人は当時の姿で庭を仰ぎます。
古海鐘一の繊細な絵と心理描写に引き込まれて最後のページで美しいしか言葉が浮かんで来ませんでした。
バベルハイムは人間のエゴや弱さを浮き彫りにした胸糞悪いエピソードも多数ありますが、この話はただただ美しい。何度もページを繰って読み返してしまうこと請け合いです。
頭の良い少年の一馬くんが、運命金貨や悪魔に利用されず、逆に利用して自分の復讐を果たす話もとても面白いですよ。ぜひ上の話を読んだ後に一馬くんの話を読んでスカッとしてください!