中卒労働者から始める高校生活

中卒労働者から始める高校生活のレビュー・評価・感想

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中卒労働者から始める高校生活
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自分のコンプレックスとうまく折り合いがついてない方におすすめするちょっと変わった青春物語

この漫画は自分のコンプレックスとうまく折り合いがついていない方におすすめです。
表題から分かる通り、主人公は中卒で労働者です。
妹が高校浪人したことをきっかけに、一緒に通信制の学校に入学します。
通信制の学校って結構コンプレックス持ってる人多いです。
一般的な高校に通ってる人と比べると複雑な家庭だったりすること多いですからね。
なので通信制の高校ってこと自体がコンプレックスなわけですけど、じゃあその背景にあるコンプレックスって例えば主人公だったら母親亡くなってて、父親は犯罪者だから収入ないので自分で働くしかないし、父親が犯罪者だから恋愛もうまく行かないっていうのがあるんですね。
でもそういうのって主人公の思い込みの部分も少なからずあって、働かなくても生活保護取るとか、相手が犯罪者でもいいっていう相手っていくらでもいますし、対処法はあります。
自分でコンプレックス意識しすぎてマイナス方向にいってるのことってよくありますよね。
でも働くことでスキルとか社会性が身につきますし、親が犯罪者ってことがわかると本人が嫌でなくても親が嫌がることはよくあるので、本人の懸念も実はそんなに間違ってないっていうのもあって、その間で揺れ動くことで主人公の精神的な成長を感じることができます。
この漫画ですごいなって思うのはキャラクター同士の相互作用です。
さっきも言ったとおり、通信学校ってコンプレックスを持っている人が多くて、例えば小さい頃に近所のお兄さんにいたずらされて男性恐怖症の子、未婚のシングルマザーなどいろいろな人がいます。
そういったキャラクターの相互作用が面白いのは、相手がコンプレックスに思っていることは自分にとって全くコンプレックスじゃなくて、逆に自分がコンプレックスに思っていることは相手にとってはコンプレックスではないという構造です。
お互いにそれ変だよねってって指摘し合うことで「それお前も同じじゃね?」「いや、それは同じじゃなくて〇〇が違うし」って議論が生まれるので、コンプレックスに対する向き合い方が深まっていきます。
絵はそんなにきれいではないですけど、心理描写は結構しっかりしていると思います。
王道ではなく、ちょっと変わった青春を楽しんでみるのはいかがでしょうか。