心の傷を癒すということ

心の傷を癒すということのレビュー・評価・感想

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心の傷を癒すということ
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神戸の震災に対応した精神科医を描いた映画です。

NHKの4回連続のテレビドラマを劇場版にした映画です。日本で心のケアを始めた初期の方である、精神科医の安克昌氏をモデルにして描いた映画です。
ドラマの原案となったのは、安氏の著書である「心の傷を癒すということ 神戸365日」(第18回サントリー学芸賞受賞)です。安氏自身、神戸の在日韓国人として、マイノリティーとして育ち、その後、神戸大学の医学部を卒業し、精神科医となります。90年代のそれなりに豊かで平和な日本で震災に遭い、そのトラウマ体験から具合が悪くなるという、周囲の人には想像が難しい事の対応に当たる方を描いていますので、独特の温かみのある映画になっていました。
安氏を演じるのは柄本佑さんですが、穏やかで思いやりのある人物を好演していました。それなりに豊かで安定した家庭の方でも、社会のマイノリティーとして生まれ育つことの難しさなども描かれていました。
震災で住んでいる人の生活がどのように変わるかなどについても、解りやすく映画化されていました。その後、神戸大学医学部精神科の助手であった安氏の師である教授の中井久夫氏を中心に、神戸の臨床家の方たちが、海外のトラウマ関連の文献を翻訳して出版していました。震災への対応で多忙な中、大変だったと思います。