中国女(映画)

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中国女(映画)
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動乱の文化大革命をパリに移し変えて描き出す、荒れる若者たちの群像劇『中国女』

『中国女』は、1967年のフランスの政治映画で監督はジャン-リュック・ゴダールで、パリの若き毛沢東主義者たちの集団を題材に取り上げています。
この作品はフョドール・ドストエフスキーの1872年の小説『悪霊』を着想源にしています。
ドストエフスキーの小説では、5人の不満分子である市民がそれぞれ異なるイデオロギー的な思想を抱きながら、革命的な暴力を継続することで帝政ロシアの支配体制を転覆する陰謀を巡らしていました。
映画では、現代のパリを舞台にしておりアパートの小さな一室でドラマが展開します。
フランスの5つの大学ー3人の若者と2人の女性ーの学生は「アデン・アラビー細胞」と呼ばれる過激な毛沢東主義者のグループのメンバーで、彼らが絡み合いながら、個人的・イデオロギー的な会話を繰り広げます。
毛沢東主義の本家・本元の中華人民共和国では折りから文化大革命が進行中で、その運動が世界中の青年に影響を与えていたのです。
時は1967年の初夏。
作中には『毛沢東語録』がアンディ・ウォーホルのキャンベル缶のアイコンのようにふんだんに登場するのですが、登場人物たちはその書を『プティ・リーブル・ルージュ』(Petit Livre rouge』と呼び合っています。
映画に挿入されている歌『マオ・マオ』の作詞はジェラール・ケガン(本来の職業はジャーナリスト)で、作曲はクロード・シャンヌ。シャンヌは実際の歌唱も行なっています。
1967年、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞にノミネートされてコンペティション上映され、審査員特別賞を受賞しました。