Azekel / アジキル

Azekel / アジキルのレビュー・評価・感想

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Azekel / アジキル
8

独自のセンスが光る先進的なソウル

ブリストルサウンドのレジェンド、マッシブ・アタックがリリースした2016年のEP『Ritual Spirit』。
2010年のアルバム『Heligoland』から6年もの間が空いていたために、待望の、そして注目のリリースでした。

その『Ritual Spirit』収録のタイトルチューン「Ritual Spirit」に客演していたのがAzekelというシンガーソングライターです。
Ritual=儀式的な、という言葉に表されるように、民族的な儀式を連想させる、神秘的でヘヴィーな音。
その中を漂うようにAzekelのファルセットボイスが浮遊しています。
ソウルを感じさせると同時に、新しい時代の感性を併せ持つ歌声で、期待できるアーティストの発見にうれしくなりました。

その期待を裏切ることなく、Azekelは質の良いコンテンポラリーR&Bを生み出しています。
ロンドンを拠点とし、アーバンで先進的なサウンドが特徴的ですが、柔らかく温かみがあり、ソウルを色濃く感じさせます。
メロディーラインと歌唱がしっかりしているところも良いです。

2010年代後半に登場したアーティストの音楽と言うと、比較的にメロディーが曖昧で、アンニュイな感じのボーカルが多いように思います。
そのために、聴いていて物足りなさを感じることも多々あります。
しかし、Azekelの音楽はしっかりと2010年代的でありながらも、往年のR&B/ソウルの良さが残されているところが非常にグッド。
そのバランス感覚に独自のセンスが光っています。