ボーダー 二つの世界 / Gräns / Border

ボーダー 二つの世界 / Gräns / Borderのレビュー・評価・感想

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ボーダー 二つの世界 / Gräns / Border
7

こんなファンタジー見たことない

ファンタジーのイメージを覆す強烈な作品。この映画の本質に気づくのか、気づかない方が良いのか。不思議という言葉では表せないほどの奇妙な映像体験。過去に培ってきたものが通用しない。すべてが新しく、頭を殴られるような感覚に襲われます。何故なら、トロールと人間が共存しているという禁断の世界を覗くことになるから。現実に潜むファンタジー。自分の存在価値を認めるには、どう生きるのが正解かを現実と異界との境界線で葛藤する姿は想像すら許されないほど苦しいものでしょう。崩壊させられる倫理観。人によっては嫌悪感を抱くかもしれない。しかし、ルッキズムやマイノリティなど、社会的に問題視されることを遠回しに伝えてくれている。容姿で生きづらさを抱えている人が存在しているのは「映画の世界」じゃない。傍観している側がどう捉えるかを試されていると思っても良いだろう。気持ち悪いと拒絶反応を示すのか、可哀想だと同情して見下すのか。この言葉は幻想に値するだろうが、「自分らしさを大事」にしたいのはトロールだろうが人間だろうが同じ。アイデンティティを解放する権利はどんな生物にもあるのだ。少し生きづらさを抱えている人こそ、心に刺さるものがあると思う。弱きものでも大きく呼吸を。

ボーダー 二つの世界 / Gräns / Border
8

合点がいった。

人とはちょっと違う容姿、ブサイクだからか、みんなに見られるし、生きづらい、そんなよくある話なのですが、その秘密がすごいというか、ファンタジーな話でした。吸血鬼の話などを書いている人の話が原作なので、そう考えるとなるほどって感じです。
最初、人より鼻がいい、特殊能力を持っている人の話かなと思っていたら、まさか、人間ではないとは!びっくりです。たしかに自然の中にいる方が楽しそうだし、動物と仲良くしているし、体つきとかも、絵本などで見るトロールぽいといえば、ぽいですね。ネタバレしてからはいろいろ合点のいく話でした。
これは特殊事例ですが、自分がいじめられた過去とか本当の両親のこととか、親に話せなかった人はたくさんいるだろうし、そのいじめが容姿のことだったら尚更親に言えないし、彼女が親とぶつかるところは見ていて辛かったです。最初から教えてくれてれば、もう少し納得いってたかもしれないし、もっと自分らしく生きていたのかなとか考えちゃいますもんね。トロールの仲間に出会って本当の自分を見つけるって話でもないし、なかなか怖い話でした。
赤ちゃんとかが関係する話なのですが、もう出産の描写とかも、敢えてでしょうが、なんかグロテスクです。たしかに別の生物で気になるのは、生殖活動はどうするんだろうかもしれませんが、そこまで詳しく見せなくて良いとか思っちゃいました。
ただのファンタジーではないので、子どもには見せられませんが、なかなか奥深いファンタジーでした。