超力戦隊オーレンジャー

超力戦隊オーレンジャーのレビュー・評価・感想

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超力戦隊オーレンジャー
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原点回帰というよりテーマの後退

本作は90年代のみならず歴代戦隊の中でもワーストの筆頭に必ずと言って良い程挙がる駄作です。原因は色々ありますが、一番はもう既に国家戦争がなくなって内紛やテロリズムがあちこち台頭していた90年代に古臭い国家戦争の縮図を持ち込んでしまったことではないでしょうか。前作「カクレンジャー」に比べるとオーレンジャーの五人は確かに往年の「ゴレンジャー」「サンバルカン」「チェンジマン」などを思わせるような健全で精悍な若者です。しかし、人間性というか内面的な部分が見えず、終始キャラクターが定まらずブレていたように見えます。
また、序盤は世界中の都市がほぼ陥落して残るは日本の東京のみというシリアスでハードな立ち上がりだったにもかかわらず、1クールも経たない内にあっさり平和な生活を送る描写があったり、また地元の夏祭りに非番で行ったりするなど軍人戦隊として有り得ない描写が目立ちます。また「心を持たない」マシン帝国バラノイアが何故か途中から愛情に芽生えたり、しかもその結果赤ん坊の命乞いを行うなど支離滅裂で、世界征服を初めて果たした敵組織という衝撃の展開が終盤にあるにもかかわらず、全然説得力がないのもこうしたキャラや設定を初めとした作風の統一性の不徹底さにあると思われます。
そしてもっと言えば、軍人戦隊であったとしてもかの『鳥人戦隊ジェットマン』という革命作を経た後ではハードルがすっかり上がっており、戦士が戦士たる所以、ヒーローがヒーローたる所以を人間ドラマの側面から掘り下げていかなければヒーロードラマが成立しないという空気が醸成されていたわけであり、結果としてシリーズ全体が良くも悪くも再考を迫る必要性を現実として突きつけられた反面教師、というのが本作に対する評価です。