五星戦隊ダイレンジャー

五星戦隊ダイレンジャーのレビュー・評価・感想

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五星戦隊ダイレンジャー
6

最高傑作になりえたかもしれない佳作

戦隊シリーズ17作目(放送当時は15作目)であった本作はある意味で前二作『鳥人戦隊ジェットマン』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』以上の異色作とも言えるでしょう。ファンタジー戦隊第二弾ということで、前二作を教訓化している印象があります。まず「ジェットマン」の反省点はドラマ性やキャラ描写に比重を置きすぎてしまっており、子供向け娯楽としての痛快さが損なわれてしまったこと、そして「ジュウレンジャー」の反省点はその逆に娯楽性に偏り過ぎて物語の骨格やドラマ性といった奥行き、骨太さが足りないこと。そして何よりメンバーの五人のバックボーンが薄くいまいち分かりにくいことが反省点となりました。
本作はその為にまずド派手な名乗りや中華拳法アクションを前面に押し出すことで子供向けとしての痛快さや娯楽性をしっかり担保しています。かつロボットとして出てくる気伝獣も龍星王をはじめ個性的なデザインやアクションが素晴らしく、何より殆ど負けなしの強さです。これでまず子供向け娯楽としての外連味、カタルシスは保たれます。その上でドラマ性やキャラ面においても改善がなされ、五人を感情移入しやすくするために現代の若者(うち二人はダイ族の血縁者)にしたこと、そして各キャラクターのメイン回にそれぞれ担当の脚本家をつけて物語を回したこと。こうすることで五人のキャラに一貫性を持たせて掘り下げていくことを目標としたことで前二作の課題はクリアしたように見えます。
しかし、本作はそれが行き過ぎたせいか、途中からもはや物語としての本筋を見失い、キャラクターが物語を食ってしまい、更に横の繋がりをきちんと持たせずに断続的にキャラメイン回を続けた弊害で物語として目指すべき所を作り手が見失ってしまいました。そしてそれが露骨に現れたのが終盤、ダイレンジャー五人を裏切ってゴーマ幹部に戻る道士のやっている行動と終盤の展開の支離滅裂さとなって現れるのです。
故に本作では最終的に50年後も戦い続けるという後味の悪い、まるで打ち切りが決定したジャンプ漫画の最終回みたいな尻すぼみの結末になり、前二作を超える傑作にはなりませんでした。勿論前半が面白かったこともあったのと作品世界を固めるビジュアルは凄かったお陰で売上は前二作にも引けを取らず凄かったのですが、作品としては前に作を超える革命作にはなり得ず不完全燃焼で終わってしまった、という印象が否めません。それぞれの素材はいいものだっただけに、やり方次第では傑作になり得ただろうになあと惜しまれます。