夢(映画)

夢(映画)のレビュー・評価・感想

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夢(映画)
10

自分が1番好きな映画 黒澤明の『夢』

まずこの映画の素晴らしい所は必ず「美しい」ことです。どの場面のどのシーンを切り取っても「絵になる」のはすごいことだと思います。
この映画を日本人として日本語でしっかり見られるというのは幸せなことだと思います。8話のオムニバス形式になっているので見る人それぞれ好きな話、嫌いな話は出てくるでしょう。私が好きなのは「第1話/日照り雨」、「第2話/桃畑」、「第4話/トンネル」、「第8話/水車のある村」です。「日照り雨」の狐たちの一糸乱れぬ動き、「桃畑」のリアル雛人形(リアルで再現しようと思う発想もすごいし、実際に行動して作り上げてしまう財力、才覚もすごい)、「水車のある村」の心に染み入るような平和な村の描写、いずれも黒澤明の「異様な」こだわり方が伝わります。
このような映画を撮るのは、今の状況では経済的にも人間的にも不可能だと思います。私は見ている映画にCGが使われていると途端に冷めてしまうたちなのですが(気づかないようにやってくれればOK)、「第5話/鴉」では一部そのようなエフェクトが使われています。その部分は「?」でした。しかしその他は完全に大満足でした。出ている俳優たちもいい味が出ています。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、見るなら何かをしながらではなく画面と向かい合って、映画と向かい合って見ていただきたい作品だと思います。