少年のアビス

少年のアビスのレビュー・評価・感想

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少年のアビス
10

ドロドロしてるけど見入っちゃう

広告で知って読みはじめましたが、最高。こんな漫画を待っていた!
ストーリーが作りこまれていてまるで小説を読んでいるよう。幼馴染、親、進路……様々な理由により町から出られない主人公の心情が描かれている作品です。
主人公が直面している状況が実際にありえるからこそ共感してしまいました。誰もが一度は思ったことがある心の闇の部分を丁寧に描写するのがとてもうまい!ストーリーが進むにつれ、どんどん悪い方向に追い込まれていって、見ていてハラハラしてしまいます。見てられないくらいドロドロしたストーリー展開と登場人物たちの心情を繊細にかつ美しく描く作画のコントラストがとても魅力的です。
スーサイドラブストーリーだけにいろんな意味で刺激的かな?初めて読んだときはHなシーンもあって驚きましたが、後から思い返すと人間の本能的な部分もしっかりと描かれていることでよりリアルになり、今後どうなっていくのか気になりました。
本作のタイトルにもあるように、アビス(深淵)、少年の闇の部分が描かれている作品です。私のようにドロドロした人間関係が好きな方や、主人公と同じ高校生、田舎暮らしをしている方、などにおススメです!
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?

少年のアビス
9

まさに深淵を覗き込む作品

とある田舎。そこにいたって普通の男子高校生、黒瀬令児は住んでいた。彼は成績優秀だったが、自分の生まれた町から出ることができないと二者面談の時、担任へ話す。令児の家庭は、認知症の祖母、看護師の母、引きこもりの兄との4人暮らしで、現在、主に母親が働きながら祖母の面倒を見ている為、令児はこの町で就職し、母親が楽できるようにしたいと思っていた。担任は高卒で就職し母親を楽にさせるのは難しいから、自身の母親ときちんと話をすることをすすめる。彼の幼馴染チャコも、家の事情はあっても令児の人生は令児のものだと言ってくれる。一見、ここまではよくある話なのかな?と感じさせる展開。しかし、令児はもう一人の幼馴染、峰岸にパシリ扱いをされており、タバコを買いに行くよう頼まれる。その日、はじめてコンビニの店員からタバコを未成年には販売できないと断られる。その後峰岸から解放され帰宅したが、ホッとする間もない。家では祖母が椅子を排泄物で汚しており、令児がその後始末を行う。それだけではない。引きこもりの兄が、自分の好きな唐揚げがないと母に罵声を浴びせる。令児の母親は令児がいなかったら死んでる、と疲れた顔でつぶやく。引きこもりの兄の食べる分の食事と、母親と自分のお弁当を買いに、令児は先ほどタバコを売れないと断られたコンビニへもう一度向かう。すると、先ほどのコンビニ店員が廃棄の弁当を薄汚い男に代金を貰わず、タダで手渡していた。彼女は、令児にタバコを差し出す。今は私服だから、と。その瞬間、令児は彼女が「アクリル」というアイドルグループの中のひとりであることに気付く。タバコに火がついた瞬間、深淵への物語が動き出す…。現在出てきた人物が、それぞれ重要人物であることがこの作品の面白い所です。ただの鬱々とした物語ではなく、恋愛要素やミステリー要素も絡み読者も想像がつかない展開ばかり起こります。