八雲立つ

『八雲立つ』とは、1992年7月号から2002年9月号まで『LaLa』(白泉社)に連載された、樹なつみによる少女漫画である。
物語は島根県にある維鈇谷村(いふやむら)と東京都国立を舞台に、巫覡(シャーマン)の布椎闇己(ふづちくらき)と古代東出雲の鍛冶師(かぬちし)・甕智彦(みかちひこ)の子孫である七地健生(ななちたけお)の友情と戦いを描いている。日本神話の八岐大蛇(やまたのおろち)を題材に、現代編と古代編で構成されている。古代編は日本神話が独自の解釈で描かれており、三種の神器や聞きなれた神々が登場する。巫覡の闇己が気を自らに憑依させる表現から、少女漫画でありながらオカルトの要素も強い。
本作品は、1997年度「第21回講談社漫画賞」を受賞した。1997年にOVAが全2巻発売され、1997年と1999年に7枚のドラマCDも発売された。続編である闇己が転生して活躍する『八雲立つ 灼(あらた)』は、2018年4月号から『MELODY』で連載が開始された。同年8月に第1巻が刊行され、それを記念し出雲縁結び空港では、闇己がデザインされた交通広告が掲載された。

八雲立つのレビュー・評価・感想

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八雲立つ
10

日本人に生まれて良かったと思う作品

日本人の心ここにあり!
最初は、歴史物の作品かと思いましたが、過去と現代が交差する物語です。神器や神の逸話など、学生の頃に歴史で習ったときは難しかったことも、大人になったからこそわかる部分があり、ストーリーの深さにはまりました。
刀にこめる魂、感情、「この人にこそ、持って欲しい」といった想い。日本人ならではの思いやりの心や、相手と魂が繋がっていくような細かな描写と、絆の緻密な表現。時代が変わっても、想い合う心の繋がっていく様と成長。
これを読んでいつの間にか日本を好きになった自分に驚いています。私は神憑りの神秘に囚われ、神事、宝物、衣服、言葉などを学ぶようになりました。作者の造形の深さに感動しつつ、身を持って体験し、所作の美しさや伝統の深さにどっぷりとハマっています。
もちろん、日本文化や歴史に関する話だけでなく、「ザ・日本人」といえる魅力満載の登場人物も見どころの1つです。キャラクターの影響で、自分は袴、着物の着付けにまではまってしまいました。ひとつの作品で、こんなにも色々な世界を知ることができ、「日本人でよかったぁ…」と思っています。

ぜひこの作品を読んで、日本の美しさと樹先生のパラレルワールドにどっぷりと浸かって、日本人であることを誇り思ってください。八雲の空に雄大な夢を抱いて…。白い心の自分、黒い自分…、そして、まだどちらにもなれない灰色の自分を見つけて欲しいと思います。

八雲立つ
8

古代史の興味の入り口に

最近、産鉄民族、たたら、海洋民族、出雲、スサノオ、ニギハヤヒ、などが気になっていた私。
何気なく漫画アプリでこの作品を見かけて、読み始めたら止まらなくなりました。
この漫画では、古代出雲族がかなり色濃く関わってきます。
主人公はたまたま祖父の形見の刀を受け継いだお人好しの大学生。
そして、もうひとりの主人公が、古代出雲族の巫女(シャーマン)の血統である高校生。
この二人の主人公と彼らを取り巻く家族も捲き込んだ、恋あり、ミステリーあり、アクションありの壮大なストーリーです。

「スサノオの怨念を封じていた七つの剣を探す」というのが旅の目的ですが、念とか気とか生霊とか、私はこのマンガを読みながら、なるほど目に見えない世界はこんな仕組みなのかと、勉強させてもらいました。
古事記も日本書紀もなんとなく読んだことがある程度の人間ですが、まったく今まで知らなかった神様の名前なども出てきて、とても勉強になります。
古代は異母兄弟間の結婚は許されたが同母間は禁忌だったとか、巫女は女ばかりではなく男もおり、その際、神が依りつきやすいように性別を消す、とか。
日本の奥深い文化みたいなのも見えてきて、とても面白いです。
ただ女性はどちらかというと脇役、悪役が多く、男性が良く描かれています。
ボーイズラブが好きな方には特におすすめです。