マンチェスター・バイ・ザ・シー

マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・評価・感想

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マンチェスター・バイ・ザ・シー
8

ハッピーエンドというわけではないけど救われた感覚

この映画の主人公は何も幸せを感じることが出来ずただ毎日を過ごしていたが、ある事情から、かつて住んでいた町に戻ることになる。以前その町で主人公は、家族や友人と楽しく暮らしていた。しかしある出来事をきっかけに彼は大きな贖罪の人生を歩むことになる。
映画は終始にわたって地味な展開で、派手な演出もなく淡々と、主人公とそこに関わる人達の小さな出来事や何てこともない日常などが流れていく。それが逆にリアルさを感じさせくれる。時折会話の中でクスっと笑ってしまうところもあるし、重いものを背負っている主人公が常にただ暗さを強調させるわけではなく、時と場面に合わせて普通に振舞おうとしてるところなど、正に”人”を見ている感覚を与えてくれる。
最後に主人公がこの映画を総括するある決断をする。その時のセリフが自分の心の中に刺さった。その短い一言だけで、主人公と同じ体験をしたわけではないのに自分も何かから解放されたような救われたような気持ちになった。
面白い映画を求めている人には退屈かもしれないけど、もし何か心に抱えている人が観ると色んな感情が溢れてくるのではないだろうかと思う。
多くの映画は理想的な人物、悪く言えば単純だったりするが、この映画に出てくる登場人物は皆それぞれ複雑な個性、良いところも嫌なところも、更には矛盾してるところなど、リアルな人間を描いている。そこが、私が特にこの映画を好きな理由となっている。