広島カープ誕生物語

広島カープ誕生物語のレビュー・評価・感想

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広島カープ誕生物語
7

はだしのゲンが逃げ出す問題作

作者である中沢啓治先生の名作といえば『はだしのゲン』。
ではその次に有名な中沢作品は?と聞かれたら、知らない人も多いと思います。
私は、『広島カープ物語』を推したい、と思います。
なぜならば、この作品は事実を元にしているにも関わらず、話があまりにも荒唐無稽だからです。

例えば、敵チームがレフトポールに直撃するホームランを打ったことがきっかけで、そのポールを主人公が引き抜く、というシーンがあります(もちろんこれも史実)。
しかし、そのときの暴力的なシーンは非常に楽しそうに描かれています。
中沢先生も楽しく、暴力シーンを描いていたのです。
はだしのゲンは、その政治的な内容から発禁処分にしろ、という過激な意見もありますが、本当に発禁処分が許されるならば、こちらのほうが圧倒的にふさわしい、と言わざるをえません。
それだけの問題作です。
だからこそ、ネットでも話題になるわけです。

中沢先生は2012年に亡くなったので、広島カープのリーグ3連覇を知ることはありませんでした。
しかし、平成にこうして優勝しても、この作品通りの世界が繰り広げられ、広島の街は75年といい意味で変わっていないことを実感します。
この作品は実録作品であり、歴史物語であり、ある意味、ギャグ漫画でもある。
そういう稀有な怪作であり、問題作なのです。