傘寿まり子

傘寿まり子のレビュー・評価・感想

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傘寿まり子
9

バイタリティにあふれたおばあちゃんの青春

傘寿とは80歳のこと。主人公のまり子は80歳になるベテラン小説家。夫に先立たれた後は息子夫婦・孫夫婦・ひ孫の四世代同居の家庭に居場所がなく、孤独な時間を過ごしていた。
そんな彼女があるきっかけから家を飛び出して一人の女性として小説家として再生していく話なのだが、とにかくまり子が前向き。
ネカフェに寝泊まりしようが認知症になった恋人と引き離されようが、どんなアクシデントも「ネタになる!」一念でへこたれず突き進む。バイタリティあふれる姿に元気を分けてもらえる。まり子が知り合う人々も田舎から出てきたゲーマーおばあちゃん、今はゴミ屋敷に住むバブル期の人気女流作家、ネット上で活躍する謎の覆面作家(その正体はゴスロリ美少女)と実に個性的。
それぞれ家族や仕事に問題を抱えた彼女たちと関わることでまり子は刺激を受け、周囲が変わっていく過程が非常に丁寧に描かれ、ヒューマンドラマとしても完成度が高い。
少々ご都合主義なきらいもあるが、それを差し引いても応援したくなる魅力がある。こんなパワフルな老後をむかえられたら楽しいだろうなあ。
SNSを活用したシャッター商店街の町興しなども描かれ、インターネットと地域が密接に繋がったぬくもりを感じさせる。