球詠

球詠のレビュー・評価・感想

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球詠
8

女の子の女の子による女の子だけの女子高校野球。

『まんがタイムきららフォワード』連載の漫画で、2020年4月にアニメ化もされています。
この作品は『八月のシンデレラナイン』、『大正野球娘。』のような「女子高校野球」を題材にした作品なのですが、何よりも最大の特徴ともいえるのが
「モブキャラを含めて作中に男性キャラが一切登場しない」
という点でしょう。
これは作者が意図的にやっている描写とのことらしいのですが、ただの女子野球を題材にした作品という訳ではなく、
「野球の試合における各キャラクターの心理描写、心理戦、駆け引き」
が本当に巧みに描かれており、実際に野球の試合でも参考にできるのではないでしょうか。
野球好きな人、野球の描写にこだわりがある人に対して非常にオススメできる作品ですね。

「満塁の場面で全国レベルの強打者を何の躊躇もせずに敬遠して、失点を最小限に抑える」
場面は、かつての松井秀喜の5打席連続敬遠を思い出しました。
実際に作中でも敬遠を行った主人公(投手)は観客から凄まじいブーイングを浴びせられるのですが、これも野球における立派な戦術の一つであることが作中で明言されており、なかなか奥が深いなと個人的には思いました。

ただアニメ版は新型コロナウイルスの影響もあったのか、余程納期に追われていたのか、作画が少し崩壊気味になっていたのは気になりました。
先行配信された海外版ではもっと酷かったとのことで、国内で放送されたものは修正されているとのことですが、それでも酷い。
ここだけが少し気になってしまったので、8点とさせていただきました。

球詠
7

漫画「球詠」

女子高生が野球をする作品ですが、とにかく心理描写が緻密で、バッターとピッチャーが表情だけで互いの心理を読み合う描写はテレパシーで会話をしているみたいで秀逸です。キャラクターもみんな個性的で野球に対してひたむきな姿勢に好感が持てます。主人公の武田詠深は中学では魔球のようなカーブが投げられたものの、キャッチャーが捕ることができないために一回戦負けをしていました。その上、キャッチャーからは魔球を批判されてやる気をなくしてしまい、高校では野球をやらないつもりでした。しかし、高校の入学式で幼なじみの山崎珠姫と再会して、なりゆきでキャッチボールをしていたところ、珠姫が魔球を捕れることがわかり、野球部に入部することにしました。この場面では、詠深が珠姫との再会を心の底から喜んでいるのが印象的でした。また、魔球を珠姫が捕ったときの詠深の表情からは、「やっと私を理解してくれる人にめぐりあえた」というような安心感と信頼感が読み取れます。試合の描写では、最初の練習試合で相手のエースと詠深が対決したとき、相手のエースは全国レベルの速球を投げられるのにもかかわらず、詠深にスプリットを決め球として投げましたが、このときは三振した詠深も笑顔で相手に感謝して、選手として互いに称えあっているのが読み取れます。