月夜のとらつぐみ

月夜のとらつぐみのレビュー・評価・感想

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月夜のとらつぐみ
7

心に残る短編集まんが

笠井スイさんという方が描かれた漫画で全8篇になる短編集です。
絵柄が細密で素敵、なおかつ雰囲気があります。漫画らしさとペン画の絵本のミックスのような感じで可愛らしさと大人っぽさが両立しています。キャラクター造形も個性があるけど特殊すぎずかといってつまらなくない程度に目がいく絶妙なバランスです。キャラクターの一人ひとりの表情にもこだわりが見え、6・7篇目の「Story Teller Story」では嘘をテーマにしていて心情の複雑さを描くのが難しそうなのに上手く描いています。
ストーリーはほんわかしたもの、仄暗いもの、物悲しいもの、心温まるものとあります。ただそのストーリーはどこか静かで心に残る印象深いもので惹きつけるものがあります。特に気になったストーリーは8篇目の「猫とパンケーキ」です。妻をなくした男と兄を亡くしたホームレスの少女の話です。どちらかといえば波の激しくない単調なヒューマンドラマですが心情の切り取り方と描き方などが丁寧で読んでいると心が安らぐ感じでした。
それぞれの短編がそれぞれの個性があるのにどれも印象的でふとした時に読み返してみたくなるそんな心の残り方になる作品です。落ち着きたいときやコーヒーブレイクに読んでみても良いかもしれません。