永遠に僕のもの / El Angel

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永遠に僕のもの / El Angel
9

酔いながら考えさせられる映画

実在した連続殺人鬼をモデルとしているが、快楽のための殺人とは感じられない。作品内の淡々とした描写と漂うラテン音楽とのミックスが印象的で雰囲気に酔いたいタイプの人には最高の映画。銃社会のアルゼンチンを舞台に、すらりと裏社会に入っていく主人公。協力する友達とその家族。対照的に、徐々に息子がわからなくなっていく両親。
終始二重にも三重にもどきどきして、危険で心臓に良くない。しかしそれだけで終わる映画ではなく、主人公の行動、生き方、考え方にはとても興味を惹かれ、考えさせられるところがある。個人的には「生きてるんだ」というセリフがとても好きで、生の寂しさ、孤独さ、若さ、そんなところに繋がるんじゃないかと思った。
邦題「永遠に僕のもの」は主人公の男友達に対する気持ちから来ているのだろう。しかしその気持ちが本当に、いわゆる狂気的な愛で、犯罪に発展したものだったかは曖昧なままである。むしろ真実は原題「El Angel」(ある天使)にふさわしく、愛は一要因にすぎず、主人公は天使のように純粋に、存在意義自体を危険地帯に晒したかったのではないかと思わされるのだ。
作品自体のダークさ、危険な妖艶さの中にあって、甘い発音のスペイン語と陽気なラテン音楽が素晴らしいアクセントになっていて、一見するにふさわしい価値がある映画だ。