男の自画像

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7

まだ勝負は終ってない

プロ野球で投手として活躍し怪我で引退。男は、その後サラリーマンとして平和で平穏に何不自由なく暮らしています。幸せなはずなのに「何かが不完全燃焼している」との拭えぬ思い、ただ過ぎていく時間。
そんな時、プロ野球時代の同僚が死にます。そこで男は「老いたとき人は後悔しても、もう間に合わないんだ。」と悟るのです。そして、引退から6年が経過し36歳になっているのにもかかわらず、プロ野球選手としての復帰を目指して過酷で無謀な戦いをはじめました。
ひろってくれた会社を辞め、本格的なトレーニングを開始。衰え太ってしまった身体、離れていく妻、落ちていくかつての仲間、運と不運、新しい出会いと別れ、焦燥、執念、後悔…非常に通俗的でよくある物語です。
しかし、いくつもの小話がそれぞれ意味を持って上手に構成されてメインテーマにつながっています。読んでいると引き込まれてしまい最終話まで止まりません。
歳をとれば誰でも肉体は衰え、若い時にはできたことができなくなるもの。それでも戦うにはいったい何が必要なのか、何をしたらよいのか。頭脳や心を鍛えるのか、技術を磨くのか、運なのか、それとも、そのすべてが必要なのか。作者の深い問いかけに考えさせられます。
まだ間に合う人にも、もう間に合わない人にもお勧めです。