たましいのふたご

たましいのふたごのレビュー・評価・感想

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たましいのふたご
8

「自分」を見つけ、見つけてもらう物語

あるハロウィーンの夜、同時刻、別々の国。死んでしまった2人の子供「アレックス」と「リーテ」に思い出せるのは「自分の名前」だけ。自分が一体何者であるのか、どうして彷徨っているのか、一体何を、誰を探しているのか…魂の共鳴する双子「ソウルメイト」に出会い、一歩を踏み出す物語。

ハロウィーンの夜に起きた悲しい2つの出来事を、交互にひとつひとつ紐解きながら進んで行くストーリーと世界観にはかなり引き込まれます。また、主人公の2人とは別の登場人物それぞれにも様々な物語があり、バラバラに思えるような内容の物語が後半に行くにつれて繋がり始め、感動的な結末までの流れも非常に「綺麗」です。上下巻の全2冊の作品ですが、1話完結で読みやすく、読み終えた後にもう1度初めから読み直す事で更に登場人物の心情や行動の意味などが深く理解できる読み応え十分な作品です。

本の装丁はまるで子供向けの絵本のようで手触りも良く優しい雰囲気のあるものですが、表紙に描かれる主人公の2人の表情や装いでその内容はあまり明るいものではない事がわかる様なイラストになっています。

三原ミツカズさんの作品の中でも、より切なく優しい物語の詰められた作品だと思います。