パレス・メイヂ

パレス・メイヂ

『パレス・メイヂ』とは、2012年7月より久世番子(くぜばんこ)が『別冊花とゆめ』にて連載した宮廷ロマンス系少女漫画。架空の明治時代を舞台に、少女天皇・彰子と、彼女に仕える子爵家の次男・御園公頼が互いを尊重し、身分の差を飲み込みながら緩やかに惹かれあう様を描いた物語。筆者はデビューこそ少女漫画であったものの、『暴れん坊本屋さん』をはじめとしたエッセイコミックをメインに活動しており、少女漫画はこの作品が6年ぶりとなっていた。

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パレス・メイヂのレビュー・評価・感想

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パレス・メイヂ
8

身分違いの宮廷ロマンス。ままならない恋ながら悲壮感のない爽やかな作品。

日本の明治時代をモデルにした架空の国と時代を舞台に、少女帝彰子と侍従御園が繰り広げる近代宮廷ロマンス。
主人公御園のキャラクターは真面目で実直。彰子を真っ直ぐに想う気持ちが少年らしさを感じさせる好感の持てる人物である。
ヒロインの彰子も帝という立場のため気高く、顔立ちもシンプルでいわゆる普通の少女漫画の主人公とは一線を画している。
ストーリーは少女帝彰子と彼女に仕える御園が、仕事を通じて心を通わせ合い想い合うまでの過程を描いている。
絢爛豪華な宮殿の中の日常のちょっとした出来事が彰子の心を救う様子や、御園の少年から青年になりかける微妙な年代ゆえのゆらぎ、彰子の弟の東宮と実母との関係、御園の実家の使用人お律の成長など、見所は多い。
恋敵の鹿王院宮もなかなかにいい味を出していて、主人公達の恋路を邪魔するという難儀な立場なため最初は印象が悪いが、次第に主人公を応援していくことにシフト、自身が幸せを掴む頃には読者から彼自身も応援されていることだろう。
そんな中で主人公達は身分違いの恋のままならなさに真っ向から立ち向かうわけではなく、自分たちの与えられた権利の中で幸せになろうと夢を追う様子が尊い。
ストーリーの進行は淡々としてそれでいて温かい。悪人が出てくるわけでも主人公達がみるみる不幸になっていくわけでもないので、読後感が非常に良い。
ただ、大きな感情をぶつけ合う話やラブシーンが好きという人にはちょっと物足りないと感じるかもしれないのでそこはマイナス点。好みの問題かもしれないが。

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