ミミの怪談

ミミの怪談のレビュー・評価・感想

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ミミの怪談
7

恐怖と戦慄の虜になる

本作は伊藤氏には珍しい原作を基にした漫画です。
何でも、木原浩勝、中山市朗両氏による現代百物語「新耳袋」を原作とした怪奇漫画になっていて、今まで有りそうでなかった怪談噺で占められています。こういった怪異譚が伊藤氏のペンになると、恐怖と戦慄の虜になってしまい、恐怖を愉しむという愉悦にひたることができます。
古いアパートでの黒ずくめで異様に背の高い姉妹が隣人に襲いかかる恐怖を描く「隣の女」、林の中でカップルが遭遇した首吊り死体が不気味な「草音」や、海岸で多数の死者の怨念が海に遊びにきた若者を死へと導く「海岸」など、怪談噺では定番ともいうべきシチュエーションのなかでオリジナリティを発揮する伊藤氏(と中山・木原両氏)には脱帽としかいいようがありませんし、また焼身自殺した母親が真っ黒な怨念となって我が子に恐怖をもたらす「ふたりぼっち」などは迫力満点のできといえるでしょう。全ての噺において同じ若い女性が登場するのですが、これはどうやら原作にはなかったようで、伊藤氏が漫画化するにあたって担当編集者の意向だったということです。とかく、キュートな女性を描くのを得意としている伊藤氏のことを考えてのアイデアだったかもしれません。この恐怖の怪談という素材で恐怖漫画の第一人者である伊藤氏にはハマり役になったような気がしてなりません。