そこのみにて光輝く

そこのみにて光輝くのレビュー・評価・感想

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そこのみにて光輝く
10

底の底、どん底だけど、そこのみで輝ける。

1985年に刊行された佐藤泰志による小説を「オカンの嫁入り」の呉美保が2014年に映画化したのが本作。主演は綾野剛で、事故によるトラウマで仲間を失い、仕事から離れ堕落する男を演じる。ヒロインは池脇千鶴、このヒロインが非常に残酷な環境で、父が病気で、寝たきりだが性欲処理を要するというもの。しないとずっと唸っているので毎日毎日家族が寝たきりの父の陰部をしごき、性欲処理をする。そして自身はスナックで働き、弟の職場の上司と付き合ってそのおじさんと愛のないセックスをするという日々だ。こんな二人が出会って傷を舐め合うように愛し合う。しかし愛が深くなるにつれ、主人公はヒロインの環境をどうにかしたいと願う。しかしそれは、危ないバランスでぎりぎり保っている今の状況を思い切りぶち壊してしまうような物である。現実の生活の安定をとるのか、理想の生活を追い求めるのか、そのバランスがシーソーゲームのようで、痛々しいふたりを見ていて胸が熱くなる。愛ゆえに壊れていく日々、理想化現実か、そう言うものがこの映画の醍醐味的部分だろう。お互いを求めれば求めるほどふたりはどんどん底に落ちるしかしそんなどん底の生活の中でもがき、愛し合い続けるふたりからはどこか光が見える。痛々しいラブストーリーで心を掻き乱されたい方へおすすすめできる映画だ。